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「大谷の試合見てないです。興味ないので」常に自分と向き合う床田寛樹が、1年目のTJ手術からカープのエース格へと成長するまで

posted2024/06/17 11:01

 
「大谷の試合見てないです。興味ないので」常に自分と向き合う床田寛樹が、1年目のTJ手術からカープのエース格へと成長するまで<Number Web> photograph by JIJI PRESS

昨季の11勝に続き、今季もここまで7勝とチームの勝ち頭であり続ける床田。2年連続の2ケタ勝利も射程圏内だ

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 ドジャーブルーのスーパースター大谷翔平が連日、日本メディアを賑わせている。ホームランを打てばメインニュースのひとつとして報じられ、プレー以外の言動も取り上げられる。野球ファンでなくても彼の動向を知ることができる中、同学年であり、同じプロ野球選手として生きる広島の床田寛樹はまったく関心を示さない。

「大谷の試合ですか? 見てないです。興味ないので。ニュースでずっとやっていますけど、わざわざ中継を見ることはないですね」

 近年は日本人選手のメジャーリーグ移籍が増え、毎日のようにテレビ中継されるようになった。日本にいながらメジャーの知識を広げられる環境であっても、床田は有名選手の名前も知らなければ、日本人選手の試合を見てもいない。

TJ手術からのプロ人生

 床田はただ等身大の自分自身と向き合ってきた。大谷がメジャーへ移籍する前年の2017年に入団するも、同年7月にトミー・ジョン手術を受けた。19年に初めてオールスターゲームに出場し、22年は前半戦だけで8勝を挙げたが後半戦初戦で右足関節骨折。ケガから復帰した昨季、自身初の2ケタ勝利を挙げると、今季はここまでセ・リーグ2位の7勝と、紆余曲折を経ながらステップアップしてきた。

 どれだけの実績を積み重ねても、おごらず、構えない。練習前後だけでなく、試合終了後も嫌な顔ひとつせず質問に答えてくれる。質問に真面目に答えながら、絶妙な間合いから記者を笑わせることも珍しくない。打撃好きを公言し、打撃の話になると投球論よりも雄弁となる。話題がやや脱線しても関西人の気質からかノリが良く、そしてきっちり笑いを取る。

 アスリートとしては、“走り込みが苦手”とか“夏場が不得手”という弱みを隠すことなくさらけ出す。相手が懐に入ってきやすい隙を見せてくれるような人柄だが、それは彼の一面でしかない。

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