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「大谷の試合見てないです。興味ないので」常に自分と向き合う床田寛樹が、1年目のTJ手術からカープのエース格へと成長するまで 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2024/06/17 11:01

「大谷の試合見てないです。興味ないので」常に自分と向き合う床田寛樹が、1年目のTJ手術からカープのエース格へと成長するまで<Number Web> photograph by JIJI PRESS

昨季の11勝に続き、今季もここまで7勝とチームの勝ち頭であり続ける床田。2年連続の2ケタ勝利も射程圏内だ

 何より、今季ここまでの登板がすべて「火曜日」であることが首脳陣の信頼を表している。開幕投手にエースを指名することが常識のようになっているが、3連戦、6連戦の初戦にあたる1週間の始まりの火曜日にも信頼の高い投手が起用される。その投手が長い回を投げれば、翌日以降の連戦で中継ぎの消耗を最小限にとどめられる利点も生まれる。

 セ・リーグ6球団で交流戦まで“火曜日の先発”を固定したのは、広島のほか阪神、巨人とリーグ上位3球団だ。阪神は昨季リーグMVPの村上頌樹。巨人は昨季2桁勝利を挙げ、WHIPでは開幕投手の戸郷翔征を上回る0.97をマークした山崎伊織が務める。

 広島と阪神はゴールデンウイーク中に予定していた月曜の試合が2試合中止となったことで、火曜日はすべて1週間の初戦となった。ローテーションが安定しているという点に加え、週頭に安定した投手を立てて戦えることがチームを軌道に乗せているとも言える。床田は阪神の村上とすでに4度対戦し、2勝2敗と渡り合った。チームトップの投球回78回2/3は、首脳陣の信頼に応えている証でもある。

いまだ見えぬ本音

「最初は大瀬良(大地)さんみたいな背中で語るような立ち居振る舞いをしたいと思ってましたけど、僕には無理だなと思った。僕は僕で先頭に立つんじゃなく、陰ながらそっとチームを支えられればいいかな」

 床田は床田のスタイルを貫けばいい。「左腕エース」から「エース格」となり、このままいけば「左腕」や「格」が外れる日が訪れるはずだ。立場が変われば、興味のなかった米国への思いも湧くのではないか──。自身の将来的なメジャー挑戦の可能性についてあらためて振ってみると、いつもの笑顔がかえってきた。

「ないですよ! 僕が行けると思います? 1年だけいっぱいお金をもらいに行くとかならありますけど、ないんじゃないですか。向こうで野球をやりたいと思ったことはないです」

 投手として進化を果たしても、飾らない人柄は変わらない。心の奥底にはいまだ触れていない気もする。そんな奥深さもまた、床田の魅力なのかもしれない。

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