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「大谷の試合見てないです。興味ないので」常に自分と向き合う床田寛樹が、1年目のTJ手術からカープのエース格へと成長するまで 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2024/06/17 11:01

「大谷の試合見てないです。興味ないので」常に自分と向き合う床田寛樹が、1年目のTJ手術からカープのエース格へと成長するまで<Number Web> photograph by JIJI PRESS

昨季の11勝に続き、今季もここまで7勝とチームの勝ち頭であり続ける床田。2年連続の2ケタ勝利も射程圏内だ

 2年連続5勝で終えた21年のオフから常に「僕は開幕ローテーションを争う立場」と言い続けていた。すでにチーム内では認められる存在だっただけに、“謙虚すぎる”印象を受けていたが、違った。春季キャンプ中、当時の佐々岡真司監督が22年の開幕ローテーション入りを明言したときに、胸に秘めていた自覚を口にした。

「僕が4番手に入らないといけないと、ずっと思ってやっていました。まずはそこに入って、左投手をしっかり引っ張っていけるように頑張りたい」

 やる気や闘争心を表に出すタイプではない。むしろ出さないようにしているとも感じることもある。テンポ良く紡がれる言葉の奥を見ようとしなければ、床田の心の奥底にはたどり着けない。

打者を幻惑する投球術

 捉えられそうで捉えられない床田の本音。それは投球にも通じる。生命線となる真っすぐとツーシームを軸としながらも、今季は精度を上げたカットボールやパーム、カーブ、チェンジアップで惑わせる。技術を年々磨きながら、投球の質を上げてきた。

 今季もセ・リーグがパ・リーグを相手に苦戦した交流戦では、従来の組み立てを変えて2勝を挙げた。7回4失点(自責3)で敗れた6月4日の日本ハム戦後に「変化球が多かった」と振り返りながらも、1週間後の西武戦でも配球の割合をあまり変えずに今季最長タイの8回を投げ、1失点で勝ちきった。

「やっぱりパ・リーグって真っすぐに強いイメージがあるので、僕の真っすぐではキツいだろうなって」

 投球には明確な狙いがあった。さらに「でも、この3試合ですごくツーシームを意識しているなと思ったので、来年は変えていくのもアリなのかなと思いました」と続け、不敵に笑った。

 21日から再びセ・リーグの戦いに戻るが、床田はここまでリーグ首位を走る広島を名実ともに牽引してきた。登板11試合すべてクオリティースタートを記録し、防御率は1.49と抜群の安定感を誇る(6月16日時点)。

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