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長谷部誠34歳「僕はこれからどうすれば?」中田英寿に相談して5年…“99%引退”からの現役続行「一番正当に評価してもらった時期かな」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2024/05/26 06:02
現役ラストマッチを迎える際の長谷部誠。前シーズンで「99%引退」するはずが、なぜ2023-24シーズンまでプレーしたか
攻撃陣に目をやると、鎌田大地やコロ・ムアニを筆頭に主力級の4選手が移籍していた。
一方、センターバックのポジションに補強したコッホとパチョの2人は大当たり。さらにボランチには前シーズンに『キッカー』誌でベストイレブンに選ばれたスヒリが加入した。中盤の守備的なポジションからセンターバックには盤石の選手層が整っていた。
またトップメラーは、多くの試合で攻撃時に変則的な4バックで、守備時はオーソドックスな5バックで守る形を採用した。監督がセンターバックに求めるのは、相手にボールを奪われた瞬間に個の力で守り切る能力や、ラフなロングボールでも跳ね返すような強さだった。
大きく力が衰えた感覚はなかったのだが
一方の長谷部は守備では読みとバランス、攻撃では展開力と身体の向きの使い方でリベロとして活躍してきた。その結果、長谷部のリーグ戦の出場試合はドイツにきてからもっとも少ない8試合にとどまり、スタメンは2試合だけだった。
大きく力が衰えたという感覚が長谷部の中にあるわけではない。
例えば、現役最後に先発出場を果たした4月14日のシュツットガルト戦にしても、「前半の僕たちは寝ていたかのようだった」と長谷部が表現した45分を経て、後半は攻撃時はリベロ、守備時にはダブルボランチの一角になってチームに流れを引き寄せた。終盤にも勢いよく前線に飛び出し、相手がファールでしか止められないようなプレーも見せていた。
「『コンスタントに試合に出れたら、自分は良いプレーができる』という自信は持ったままやめられます。ただ、コンスタントに試合に出ていたら得られるフィーリングというのがあるんですよ。今シーズンは試合にコンスタントに出ることがなく、それが失われてすごく難しさは感じていました」
そして、この試合の翌週に長谷部はドイツで記者会見を開き、引退を発表した。
純粋にサッカーを楽しみ、正当に評価してもらった
ただ、引退を決めたのはシュツットガルト戦がきっかけだったわけではない。その数週間前には意志を固めていた。
「あぁ、次のステップに進むべきときが来たのだな」
全ての状況を俯瞰したうえで、長谷部は自分自身で決断した。