核心にシュートを!BACK NUMBER
長谷部誠34歳「僕はこれからどうすれば?」中田英寿に相談して5年…“99%引退”からの現役続行「一番正当に評価してもらった時期かな」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2024/05/26 06:02
現役ラストマッチを迎える際の長谷部誠。前シーズンで「99%引退」するはずが、なぜ2023-24シーズンまでプレーしたか
「長谷部は38歳になっても、CLでプレーしているんだよ! それだけでもう、高く評価するに値するさ」
見逃せないのは、2009-10シーズンにボルフスブルクで初出場してから、再び同大会に出るまでに、13年も経っていたこと。
CLに出場できるのは、各国のトップの数チームだけ。そうしたチームに在籍できる期間はそもそも少ない。
長谷部はニュルンベルク経由でフランクフルトに来て、チームとともに年々、少しずつ成長し、13年かけて世界最高の舞台へ戻ってきた。公式のデータこそないものの、13年ぶりに出場する選手などほとんどいないはずだ。
少し考えましたよ。今シーズンでやめようかなと
ただ、そんな舞台で予期せぬアクシデントが襲った。トッテナム戦で左ヒザを負傷してしまったのだ。さすがに落胆を隠せなかった。
「やはり、少し、考えましたよ。『今シーズンでやめようかな』と……」
実は2022-23シーズンの時点で「来シーズンで99%、引退するつもりでいます」と語っていた。そのなかでの負傷は、長谷部の心にも重くのしかかった。
ただ……。
「1番はやはり、サッカーをすることの楽しさを感じたことです。チームメイトとの競争などを通して、それが消えることは全然なかった。むしろ、楽しさがより増してきているので」
それが、残り1%の道を選んだ最大の理由だった。
まだサッカー選手として戦おう。
長谷部は39歳にして心に誓った。CLという最高の舞台での負傷は、自分にとってのサッカーの価値や大切さを気づかせてくれたものだったのかもしれない。
今シーズン、つまり2023-24シーズンは「99.9%引退する」だろうという覚悟をもって、向かうことになった。
そんなシーズンにやって来たのが、若き戦術家トップメラーだった。
鎌田らが去った新チームの中での役割
長谷部が新指揮官に与えられた役割はハッキリしていた。コンディションを保つためにも、若い選手たちの規範となるためにも、ドイツ杯では常に先発を任された。一方で、ブンデスリーガやELの舞台では、サブからチャンスをうかがうことになった。
ただ、過去と決定的に違っていたのは、チームが大きく崩れるような時期がなかったこと。シーズンを通して得点力不足にあえいではいたのだが、守備は安定していた。
原因はハッキリしている。クラブの補強策に偏りがあったからだ。