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長谷部誠40歳「感極まった」子供と涙のハグ、「妻・佐藤ありささんも気品ある振る舞いで…」記者が見た引退試合と“指導者宣言”の儀式とは

posted2024/05/26 06:03

 
長谷部誠40歳「感極まった」子供と涙のハグ、「妻・佐藤ありささんも気品ある振る舞いで…」記者が見た引退試合と“指導者宣言”の儀式とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

日本での引退会見に臨んだ長谷部誠。後ろにはドイツ語で「ありがとう、マコト!」と刻まれていた

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

元日本代表MF長谷部誠が、偉大なサッカー選手としてのキャリアを終えた。00年代後半からドイツで取材を続けた日本人ライターが、強く印象に残った思い出を所属クラブ時代ごとに綴る。(NumberWeb引退記念ノンフィクション/第1回から)

 長谷部誠のラストダンスは、もう少し先になりそうだった。

 5月18日、ブンデスリーガ最終節。フランクフルトは6位に入りEL出場権を確定させるため、最低でも引き分けが必要だった。そんな状況でホームにライプツィヒを迎えたが、ハーフタイムには静かな時間が流れていた。

 今シーズンをもって引退する長谷部とキャプテンのローデ。2人のレジェンドに少しでも長くプレーする時間を与えたいという想いは、ドイチュ・バンク・パルクにつめかけた5万人近いほとんどが抱いていた。だから、特別な一戦の前に大々的なコレオを作り、試合が始まってからは怒号のような歓声でチームを後押ししていた。

ハーフタイムに出された「○×クイズ」

 ただ、全てが上手くいっていたわけではない。前半を終えて0-1とリードを許していた。

「経験上、物事がそんなにうまくいくことはないというのは、自分の中でわかっている部分があったので」

 長谷部はそう振り返る。

 だからハーフタイムの間もリラックスして、チームメイトとボールを蹴っていた。そのかたわらで、ピッチ上空につるされた大型ビジョンを用いた、スポンサー主催の〈○×クイズ〉が行なわれていた。

「『ブンデスリーガでもドイツ杯でも優勝を経験している長谷部は、Jリーグの浦和レッズ在籍時に、国内で獲れる全てのタイトルを手にしている』。これは正しいでしょうか、それとも間違っているでしょうか?」

 正解はもちろん、○である。

 長谷部の選手としての魅力はライト層にはなかなか伝わりづらいかもしれない。だが、長谷部の功績は彼が手にしてきたものを振り返れば、一目瞭然だ。

<チームでのタイトル>
ブンデスリーガ
ドイツ杯
ヨーロッパリーグ
Jリーグ
天皇杯
ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)
アジアチャンピオンズリーグ
アジアカップ

<個人表彰>
キッカー誌の年間ベストイレブン
ブンデスリーガの選手たちが選ぶベストイレブン
EL(ヨーロッパリーグ)の優秀選手賞
アジア年間最優秀選手賞
Jリーグベストイレブン

 この他にもブンデスリーガにおける日本人の最多出場記録、ヨーロッパ主要国トップリーグでの日本人最長在籍記録もある。また、ブンデスリーガ61年の歴史のなかで、あのレバンドフスキと並んで、外国籍選手としては歴代2位となる384試合に出場した。

ピッチに入った長谷部はこれまでと同じように

 彼の場合、獲れなかったタイトルを探す方が難しい。長谷部に手が届かなかったのは、ほとんどの選手にとって無縁のままで終わるUEFAチャンピオンズリーグとW杯くらいだ。ドイツ人にとっても、長谷部のタイトル数の威力は伝わる。それもまた、長谷部への敬意を増幅させてきた要素である。

【次ページ】 愛娘と愛息がピッチに入ってくると…

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