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「ユウキが抜けるのは寂しくなるわ」石川祐希“スター軍団”へ移籍、ミラノの本音は…? 日本の青年がイタリアで“特別な存在”になった理由
posted2024/05/15 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
石川祐希はバレーボール界の最高峰、セリエAで特別な存在になりつつある。
驚くような光景を目にしたのは、今季のプレーオフ準決勝、敵地ペルージャでの第3戦が終わった後だ。
スポーツ観戦でのイタリア人は意外にせっかちで、どんなに大きなアレーナやスタジアムでも試合終了直後から席を立ち、5分も立たないうちに空っぽにする。第3戦当日は誰もが家路を急ぎたい日曜で、4月初旬の夜風はまだ冷たかった。
しかし、アレーナ「パラ・バルトン」のアウェーチーム用出口には石川を間近で一目見たい、彼のサインが欲しいと願うファンがわんさといた。ドーピング検査の対象となった石川が退出するには時間がかかると判明した後も、遠路はるばるミラノから駆けつけた熱心な応援団に加え、男女を問わない地元ペルージャの10代のファンたちは辛抱強く待ち続けた。
「ユウキ! ユウキ!」
試合終了からたっぷり1時間は経った後、ようやく姿を現した石川に彼らは歓声を上げた。
「ユウキのような好青年はそうそういないわ」
ミラノから片道450キロを分乗してやってきた主婦ファンに、なぜここまでと尋ねたら「ユウキみたいにいつでもどんな場面でも爽やかな好青年はそうそういないわ。好きにならずにいられないわよ」と返ってきた。同行のグループ一同がうなずき、敵地ペルージャのファンに尋ねても同じような答えが返ってきて、正直感嘆した。
プレーオフ期間中、石川は同僚マッテオ・ピアノを聞き手にした公営放送RAIのTVインタビューにも答えている。パスタ好きを突っ込まれ、アウェー遠征時の間食にも食べることを白状させられると、陽気なピアノはカメラに向かい声を上げた。
「さあ皆さん、ユウキ・イシカワのようにバレーが上手くなりたければランチの後、おやつでもパスタを食べよう!」
軽妙なやり取りはイタリア人の自国料理愛をもくすぐり、話題になった。