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「新基準バットは3万5000円と高価だが」記者の直撃に高野連「申し訳なく思いますが…」吉田輝星の“球数制限”がきっかけ、今後どうする? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/04/06 17:02

「新基準バットは3万5000円と高価だが」記者の直撃に高野連「申し訳なく思いますが…」吉田輝星の“球数制限”がきっかけ、今後どうする?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2018年夏の甲子園を沸かせた金足農・吉田輝星。ただ高野連の中では「球数問題」と“飛びすぎるバット”は大きな課題としてとらえていたようだ

 金属バットを使い慣れた中で、木製バットに持ち替えると十分に実力を発揮できないことが多かったのだ。昨年のWBSC U18ワールドカップでは、日本が優勝したが、31回を数える大会の歴史でこれが初優勝だった。しかし今後は、国際大会でのさらなる活躍も期待できるだろう。

 筆者は昨今のプロアマの「最先端の練習環境」の取材を続けている。大谷翔平など世界のトップ選手は米シアトルの「ドライブラインベースボール」などのジムで、バイオメカニクス(生体力学)に基づいて自らを分析し、新球種開発、肉体改造をしている。

 高校野球にも、こうしたトレンドは確実にやってきているし、新しい技術論を導入する指導者もいる。弾道測定分析機器「ラプソード」など最先端機器を導入する高校も増えた。

 一方で、競技人口は減り続け「野球をするのが精いっぱい」という高校生もいる。高校野球の世界でも「格差の拡大」は深刻だ。古谷次長の言うように「1、2回戦で負ける選手にも野球の楽しさを与える」重要性は今後さらに高まるはずだ。

打球音のわりにボールが飛ばない印象が

 春の甲子園、筆者は初日の試合を観戦したが、打球音のわりにボールが飛ばないと感じた。

 2試合目の田辺は21世紀枠であり、対戦相手は甲子園常連校の星稜。大差がつくかと思えたが、終盤まで接戦だった。飛ばないバットは特に打撃面での戦力格差を縮めるのかもしれない。

 以下、2020年以降の春夏甲子園の本塁打数。カッコ内は1試合当たりの本塁打数。(日本高野連提供のデータによる)

20年 春(中止) 夏(中止)
21年 春31試9本(0.29)/夏46試36本(0.78)
22年 春30試18本(0.60)/夏48試28本(0.58)
23年 春35試12本(0.34)/夏48試23本(0.48)
24年 春31試3本(0.10)

センバツの結果を高野連側はどう捉えている?

 今春の甲子園の本塁打は3本、うち1本はランニング本塁打だった。古谷次長は以下のように語る。

「本塁打数は打者の打撃力のみでの評価は出来ませんが、今年の本塁打数3本という数字は1974年に高校野球で金属製バット導入後、選抜大会では最も少ない本数となりました。新基準バットに打者が慣れるまではもう少し時間を要するかもしれません。

 昨年と比較しても、外野の守備位置が明らかに前になっており、盗塁や犠打が増えているように見受けられました。

 まだ選抜大会を終えたばかりですので、今選抜大会のみで新基準バットの効果を評価することは出来ないと考えています。当連盟は元監督出身で構成する技術・振興委員会がありますので、同委員会を中心に今年の全国高等学校野球選手権大会や都道府県大会などを注視していきます」

飛ばないバットでも長打を打つ選手が出てくれば

 高校野球はスモールボール化するという見方があるが、筆者は一概に言えないと思う。「フライボール革命」の理論で、飛ばないバットでも長打を打つ選手も出てくるだろうし、機動力を生かすチームも出てくるだろう。そうした変化が「高校野球の多様性」につながればよいと思う。

第1回第2回からつづく>

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PL清原和博の1984年センバツは30本塁打→今年は3本…高野連“飛ばないバット採用”背景に名将・尾藤公の遺言「一番の仕事じゃないかと」

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