酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「新基準バットは3万5000円と高価だが」記者の直撃に高野連「申し訳なく思いますが…」吉田輝星の“球数制限”がきっかけ、今後どうする?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/04/06 17:02
2018年夏の甲子園を沸かせた金足農・吉田輝星。ただ高野連の中では「球数問題」と“飛びすぎるバット”は大きな課題としてとらえていたようだ
「ないことはないと思います。ただ、新基準バット(R)に関しては、メーカーの開発の自由度は、従来のバット(N)よりも狭まっていると思います。
以前のバットは、肉厚を薄くすることで(バットがへこんで反発する作用を活かした)トランポリン効果を生んでいましたが、新基準では『約4mm』という厚みの基準が設けられています。この部分では難しいでしょう。
ただし重心がトップとかちょっと手前とか、選手にとって振りやすいバットを開発することは可能です。でもそれによって、極端に飛ぶバットができるとは考えにくいと思います。
それでも、メーカーの動きには今後とも注視したいと思います。金属バットのメーカーは国内に14社ありますが、あくまで木製バットの代用品である、という考え方は、メーカーの方々も理解していると思います」
新基準バットが高価なのは申し訳なく思いますが
――50年前の金属バットと同様、今回も日本高野連は加盟校に金属バットを配布しました。今回は2本(のち追加で1本)ずつでした。しかし、この本数ではとても足りないです。新たな金属バットは1本3万5000円前後と高価ですが、価格をもう少し抑えることはできないのでしょうか?
「BBCORのようなアメリカのバットの規格を採用しなかったのは、費用と手間がかかることが大きかった。1974年の金属バットの導入も『経済的負担』の軽減が最大の目的でした。
その点、新基準のバットが高価になるのは、申し訳なく思いますが、打球速度を下げるだけでなく、事故の防止や、耐久性を考えて何回も何回も試験を繰り返した。その結果SGマークで品質、安全性を保証した金属バットができたわけで、この価格になるのはやむを得ないと思います。仮にSGマークのついていない廉価版のバットができたとしても、それを承認することはあり得ないと思います」
昨秋から、各校に新基準の金属バットが届いた。筆者は公立校を中心に話を聞いて回ったが、「飛ばない」「芯を食わないと野手の頭を抜けない」との声が多かった。またバットが細くなった分「ミートの精度を上げる」重要性を口にする指導者が多かった。投手は思い切ってストライクゾーンに投げられる、また野手は思い切って打球を処理に行くことができる、との声も上がった。
国際大会では木製バットを使うことになるだけに
一方で、今センバツの青森山田高校のように――木製バットを併用する学校も増えた。
日本の高校生は、国際大会ではあまり活躍できなかった。その最大の要因が「バットの違いだ」とも言われた。