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「海外が必ずしも正解とは限らない。でも…」日本中距離“最速女子高生ランナー”が名門・ルイジアナ州立大へ進学…異例の決断の裏に“ある選手”の言葉 

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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photograph by(L)AFLO、(R)Hideki Sugiyama

posted2024/03/25 11:03

「海外が必ずしも正解とは限らない。でも…」日本中距離“最速女子高生ランナー”が名門・ルイジアナ州立大へ進学…異例の決断の裏に“ある選手”の言葉<Number Web> photograph by (L)AFLO、(R)Hideki Sugiyama

高2時のU-20世界選手権で6位入賞したものの、高3時は故障の影響で苦しんだ浜松市立高校の澤田結弥。そんな彼女に日本女子中長距離のパイオニアがかけた言葉は…?

 故障が癒えた9月以降は、少しずつ練習を再開した。

 駅伝シーズンには母校2度目となる全国大会出場の立役者にもなり、12月には都大路でエース区間の1区を駆けた。年明け2月の福岡クロカンでは、シニアのランナーを相手に2km部門で憧れの田中に次ぐ2位に入り、再びセルビアで行われる世界クロカンの代表にも選ばれた。

 3月頭にはルイジアナ州立大の語学試験に無事、合格。今後は9月の入学までは地元・浜松を拠点に英語の勉強に力を入れつつ、日本選手権などの大会を目指していくという。

「ダイヤモンドアスリートのカリキュラムにたまたまオンライン英会話が入っていて、それがとても助かりました。学校の授業が終わってからは1日5時間~6時間とか勉強して、少しは話も理解できるようになったと思います」

最大の強みは「いい意味での“陸上素人”感」

 澤田を指導する杉井将彦監督は、彼女の最大の強みを「いい意味での“陸上素人”感」と分析する。

「いまだに全部のレースで自己ベストを出す気で走っているんです。このレベルの選手では普通、考えられないでしょう(笑)。でも、それを心から信じられる強さがある。それが実はすごく大事なことだと思っています」

 元110mハードルの日本王者で、現在は日本陸連の強化育成担当も務める杉井はこう言葉を繋ぐ。

「いまの日本の育成年代の選手は、インターハイであれ全中であれ、短中距離であれば予選、準決勝、決勝の3本、長距離であれば予選と決勝の2本のレースをいかに高いレベルで“まとめるか”で結果につながっています。でも、世界に出たら1本のレースでいかに120%を出せるかの勝負になってくるんです」

 ユース、ジュニアの年代ならば、従来のやり方でもなんとか通用する。

 だが、前半からハイペースで突っ込んで、その結果“落ちてくる”選手を抜いて着順を上げるレーススタイルでは、シニアになって力が付き、高出力で複数本のレースを走れるようになった海外勢に太刀打ちができなくなってしまう。

【次ページ】 「普通の高校の部活動」だから得られたもの

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