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「金閣寺の坂を走った成果がでました」ボストン・マラソンで大迫傑に先着して入賞…異色の経歴“京都の市民ランナー”森井勇磨とは何者か?
posted2024/04/19 11:05
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
JIJI PRESS
両手を挙げ、笑顔で森井勇磨(京都陸協)はフィニッシュラインを駆け抜けた。
はじけるような、心からの笑顔だった。
市民ランナーの森井が、ワールドマラソンメジャーズの1つ、ボストン・マラソンで自身初のサブ10(2時間10分切り)となる2時間9分59秒で8位入賞を果たした。
日本人選手の2時間10分切りは1981年に優勝した瀬古利彦以来43年ぶりだっただけでなく、初の海外レースで自己ベスト(2時間14分15秒)を4分以上更新という激走ぶり。パリ五輪のマラソン代表で前日本記録保持者の大迫傑にも先着した。
「10位以内、サブ10という目標を達成できてびっくりしています。日本のエースである大迫選手に勝てたこともものすごく嬉しかったです。本当に100点以上の走りができました」
疲れを見せず、森井は快活にレースを振り返った。
スタート直後の下り坂から「爆走」
注目を集めたのはスタート直後のことだ。
号砲と共に飛び出した森井は、快調にペースを上げていく。
森井の飛び出しを見たテレビの解説者が「過去の優勝者たちは皆『我慢強さ』を強調していました。スタート直後は少しペースが速くなりがちですが、この辺からは冷静にペースを刻む必要がありますね」と解説するが、それとは裏腹に上下黒のユニフォーム、黄色いキャップの森井はボストン・マラソン名物の下り坂を軽快に下っていく。
無謀なのか、計画通りなのか。
周囲の心配をよそに、沿道からの声援に時々手を挙げるなど森井は楽しそうに足を進める。
最初の1kmを森井は2分34秒、追いかける集団は13秒差の2分47秒前後で入る。
「さすがにペースが速すぎて、その後の上りでお尻あたりがきつかった」と笑うが、森井のペースに後続集団が刺激されたのか早々とレースが動く。