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陸上歴わずか1年半で「世界大会入賞」の衝撃…異例のキャリアの“高校女子No.1ランナー”澤田結弥が米の名門・ルイジアナ州立大へ進学を決めたワケ
posted2024/03/25 11:02
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
(L)jaaf、(R)Hideki Sugiyama
「とにかく前についていくしかないかなぁ」
2022年8月、浜松市立高校2年生の澤田結弥の姿は、南米コロンビア・カリにあった。
澤田は、この年開催されたU-20世界選手権の1500m日本代表に選ばれていた。本格的に競技をはじめたのは高校入学後。キャリアで言えばまだ1年半だ。それでも世界の舞台で予選を突破し、決勝まで駒を進めていた。
コロンビアでは治安の問題もあり、基本的にはホテルに缶詰め。日本ではほとんど使わないトレッドミルでの調整も多く、ようやく使えたウォーミングアップエリアのオールウエザー走路は施工が間に合わず、タータンが敷かれていなかったという。
普段は「陸上に関しては神経質」だという澤田だが、その環境でかえって開き直れた部分もあった。タイムや展開云々を考えるよりも、とにかく前をいくアフリカ勢の背中を追うことだけを決めた。
決勝レースの号砲が鳴ると、ハイペースでレースを進める先頭集団に食らいついていく。
ラスト1周までは先頭争いの機会を窺っていたものの、ラスト200mで一気に引き離された。それでも高校歴代2位の4分12秒87のタイムで6位入賞を果たした。
本格的な競技歴は1年半…それでも世界の6位に
「最後のスパートは、ここからこんなに上がるんだと思いました。日本では味わったことのないスプリントの強さでした」
日本の全国大会で入賞経験すらなかった新星は、一足飛びに世界と伍した走りを見せた。
そしてこの走りが、その後の澤田の運命を大きく変えることになる。
「走り終わった後、本人に『最後のスパートがみんなすごすぎて、全然ついていけませんでした』と言われたんです。でも、決勝は最初の800mを2分8秒で入っている。これはインターハイの800mで入賞できるようなタイムなんです。そりゃ持つワケない……ついていけると思っていたのが逆にすごいなと思いました」
澤田を指導する杉井将彦監督は、そう苦笑する。