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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「海外が必ずしも正解とは限らない。でも…」日本中距離“最速女子高生ランナー”が名門・ルイジアナ州立大へ進学…異例の決断の裏に“ある選手”の言葉
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by(L)AFLO、(R)Hideki Sugiyama
posted2024/03/25 11:03
高2時のU-20世界選手権で6位入賞したものの、高3時は故障の影響で苦しんだ浜松市立高校の澤田結弥。そんな彼女に日本女子中長距離のパイオニアがかけた言葉は…?
まだ10代の高校生だ。しかも、それまでは長期の不調など経験したこともなかった。競技の結果は、如実にメンタル面にも影響した。
こんな調子でアメリカなんて、本当に行けるんだろうか。弱気になった。前向きになりかけていた世界への扉が、少しずつ閉まろうとしていた。
そんな中でインターハイが終わった8月、テレビで見ていたブダペスト世界陸上でやり投げの北口榛花(JAL)が金メダルを獲得したシーンに目を奪われた。チェコ人のコーチと喜びを分かち合い、流暢なチェコ語で現地のインタビューに答える北口の姿は、目標を見失っていた澤田の心にもう一度、火をつけた。
「とにかく世界の舞台で輝いていた北口さんがカッコよかったんです。ダイヤモンドアスリート向けの講演で『早いうちから海外に出たほうがいい』とご本人が言っていたことも思い出して。
U-20世界選手権こそ入賞できましたけど、私、国内でも“1番”になったことがないんです。だからこそ北口さんを見て、なんというか――世界とか、もっと高いところを目指してみたいなと、素直にそう思えたんです」
海外への進学…背中を押した先輩たちの言葉
その後は、アメリカの大学への進学を選んだ男子800mの元日本王者であるクレイアーロン竜波(相洋高→テキサス農工大→ペンシルベニア州立大)や、100mハードルの高校記録保持者で、現在筑波大からテキサス大サンアントニオ校に編入した小林歩未、独自の進路を歩み続ける女子中長距離の第一人者である田中希実(New Balance)らにも相談したという。
「田中さんに言われたのは、競技の面では『必ずしも海外に行くことだけが正解とは限らない』ということでした。でも、その上で皆さんが共通して言っていたのが『(海外へ進学するという)挑戦をすることはとても価値があることだし、その選択自体は全く後悔していない』と。それですごく背中を押してもらえた気がします」