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國學院大・平林清澄はなぜ初マラソン日本新を出せた?…記録続出“超厚底シューズ”を選ばなかったワケは168cm、44kgの「超軽量ボディ」にあり
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/28 11:04
大阪マラソンで初マラソン日本新記録で優勝した國學院大の平林清澄(3年)。来年の箱根では優勝を狙うチームのエースという重責を担う
だが、平林の選んだタクミ センはそれよりも薄く、最新の「10」でみると厚さは「ヒール:33 mm/前足部:27 mm」となっており、約1cm薄い。
一般的には厚い方が反発力に優れており、第100回箱根駅伝でタクミ センを選んだのは平林を含めて9名と、選手全体をみてもアディダス着用者の中でも明らかに少数派だ。しかも、平林は箱根でも今回の大阪マラソン最新モデルの「10」ではなく一つ前の「9」を選んでいる。
「厚底を使っちゃうと、もう自分の力じゃないというか」
以前の取材で、平林は周囲とは違うシューズ選択の理由を教えてくれたことがある。そこにはトップランナーならではのこだわりがあった。
「厚底ってすごくクッションがありますよね。地面にバンッてついたときに、最初にアウトソール(靴底)がパンッてついて、ミッドソールのクッションが潰れるじゃないですか。バキュンッて。潰れた部分がガンッて跳ね返って地面から離れるんですけど、そこの時間差が嫌なんですよ。潰れて、反発するまでにタイムラグがあるのが気になってしまう。
それに厚底だと、接地の時に足の回りが遅くなるんです。ガーンッて跳ねはするんですけど、回転が遅くなって走りの動きがゆったりになってしまう。僕の強みは『軽さ』とか、『回し』なので、ちょっと合わないんです。それに厚底を使っちゃうと、もう自分の力じゃないというか……僕は大きな反発というよりも、自分の足を使って走りたいんです」
高校時代の平林はトラックもロードもすべてASICSの薄底シューズの定番である「ソーティーマジック」で走っていた。周囲が厚底シューズを履いても手を伸ばそうと思ったことはなかったというが、高校時代から今に至るまで自分の走りの「強み」を正確に理解し、それを活かせるシューズを選んできたということだろう。