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國學院大・平林清澄はなぜ初マラソン日本新を出せた?…記録続出“超厚底シューズ”を選ばなかったワケは168cm、44kgの「超軽量ボディ」にあり
posted2024/02/28 11:04
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
JIJI PRESS
「シンデレラボーヤ」
2月25日の大阪マラソンで優勝した國學院大・平林清澄につけられたニックネームだ。
この日、平林の走りはまさにシンデレラストーリーの主人公のようだった。2分58秒のペースを刻む先頭集団で安定した走りを見せ、32km過ぎの起伏を利用してスパート。初マラソンだったためギャンブル性の高い仕掛けにも思えたが、昨秋のMGCを制してパリ五輪内定の小山直城、2時間4分台の自己ベストを持つキッサ(ウガンダ)らを振り切り、そのまま優勝テープを切ったのだ。
優勝タイム、2時間6分18秒。これは初マラソン日本最高記録かつ学生日本新記録であり、21歳以下としてはアフリカ勢以外で初めて2時間7分を切ったことになった。
レース後、タイムについて平林はこう振り返っている。
「後ろに海外の選手がついてきているのは怖かったけど、気にしたらダメだと思って、自分がいけるところで仕掛けようと思っていました。勝負に徹した中でタイムがついてきて率直にうれしい。(42.195kmという)未知な領域は楽しみだった。最後は1km、1kmが長く感じたけど、正直楽しかったです」
パリ五輪の設定記録は突破できなかったものの、誰もが苦しいマラソンを「楽しかった」と振り返るコメントは、國學院大の前田康弘監督の命名通りマラソン界の「シンデレラ」にふさわしいものだろう。
シンデレラの「靴」の正体は…?
シンデレラの物語では、忘れてきた「ガラスの靴」が鍵になるが、21歳のボーヤの足元も他の選手とは違う。
今回の大阪マラソンで着用したのがadidasの「アディゼロ タクミ セン9」だ。これは箱根駅伝やマラソンレースでお馴染みの「厚底シューズ」とは少し異なる。
多くの選手が着用しているのが、NIKEのアルファフライやヴェイパーフライ、ASICSのメタスピードシリーズ、adidasのアディオス プロだ。これらはソールの厚さが世界陸連の規定「40mm以下」をぎりぎり下回る厚いミッドソールを備え、カーボンプレートが搭載されたものだ。エリウド・キプチョゲ(ケニア)ら世界トップ選手もこれを履いている。