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オシムが森保ジャパンに苦言「個の力頼り問題」は解決できないのか…「ペップ、三笘薫ブライトンのデ・ゼルビはそうだ」トルシエも直言
posted2024/02/26 17:38
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
JFA/AFLO
フィリップ・トルシエ電話インタビューの第3回(全3回/第1回、第2回からつづく)である。現在の日本代表は戦略的なコレクティビティを欠いている――そうトルシエは言う。実は同じことを、イビチャ・オシムも東京五輪準決勝・日本vsスペインの後に指摘していた。連係が欠如し、個の力に頼ったための敗北だったとオシムは苦言を呈していた。
またオシムは、別のときに「私は日本のサッカーが規律に溢れているとは思わない」とも述べている。そうであるならば、トルシエやオシムが語るコレクティビティやディシプリン(規律)と、日本人が考えているそれらの違いを踏まえたうえで、日本代表はこれからどこに向かっていくべきなのか。
トルシエの言葉は続く。
トルシエが考える「3つのプレー基準」とは
――監督は明確な理念や哲学を選手に示すことで、彼らにコレクティブな戦略に基づいたプレーをさせられるわけですね。
「繰り返すが、戦略とは11人の選手が個別に考えるものではない。むしろ共通の戦略のもとで、選手はそれぞれが決断を下す。優れた選手と凡庸な選手の違いは、そこにおける決断と実現するクオリティだ。
プレーには3つの基準(段階)がある。最初の基準は選手がプレーを理解すること。どういう状況にボール、チームがあるかを理解する能力だ。2つ目の基準は決断・判断だ。決断とはボールをどこにパスするか、どこを見るべきか。クロスを上げるのか、それとも一度ボールを下げるのかを選手が決めること。そして3つ目の基準は――これが最も重要だが――正確にプレーする能力だ。つまり2つの基準を実現できるだけのテクニックを備えていることだ。よく理解して正しい判断ができる。そのうえで効果的なプレーができる。以上が一連のプレーの流れだ。
日本の選手もサッカーをよく理解し、どんなときにも的確な判断ができる。そしてその判断を効果的に実現できる。それは監督が決めた範囲の中で、最善の判断ができる選手でもある。
プレーの範囲を決めるのは監督だ。そしてそれぞれの試合には固有の範囲、ストーリーがある。試合はひとつひとつ異なるし、異なる力関係の相手と対戦する。だからそれぞれの試合に固有の戦略や選手構成があり、新たな真実が出てくる。昨日と今日の試合は異なるし、明日の試合とも異なる」
森保にとって個の価値が、戦略の70~80%なのだろう
――たしかにその通りです。