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オシムが森保ジャパンに苦言「個の力頼り問題」は解決できないのか…「ペップ、三笘薫ブライトンのデ・ゼルビはそうだ」トルシエも直言
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byJFA/AFLO
posted2024/02/26 17:38
アジア杯イラン戦後、三笘薫を労う森保一監督と名波浩コーチ
まさに割合(パーセンテージ)の問題で、森保は70%を選手との個の関係のために割き、彼らの個人的な能力に依拠している。コレクティブのために割いているのは20~30%に過ぎず、それでは十分とは言えない。彼は選手に自由を与えて判断を委ね、選手に信頼を寄せている。
しかし個のレベルで選手が納得のいくチャレンジ(モチベーションとチームへの献身)を作り出してはいないし、彼らに拠り所となるものや十分な指示を与えてはいない。そのことを森保はよく考えるべきで、選手に拠り所を示すべきだ。つまりコレクティブな中で選手それぞれの役割を明確にする。攻撃においても守備においても、選手はコレクティブな役割を具体的かつ明確に持たねばならないし、周囲の選手たちとの位置関係も明確にしなければならない。そうして個とコレクティブな部分とのバランスを保つべきだ。日本の場合だと、それは少なくともフィフティ・フィフティであるべきだ」
グアルディオラ、デ・ゼルビもそうだ
――あなたが語るサッカー本来の意味でのコレクティビティが、日本では正確に理解されていないように思えます。
「そうかも知れないが、それは日本だけに限らない。今日、それだけコレクティブなスタイルを実践している監督は多くはない。ペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)は数少ないひとりで、(三笘薫が所属する)ブライトンのデ・ゼルビもそうだ。他にはインテルのインザーギやトッテナムのポステコグルー、マンUの監督(エリック・テン・ハフ)もそうかも知れない。しかし彼ら以外は心理面に重きを置いていて……リバプールのクロップは森保と同じで、コレクティブよりも個を重視するタイプだ。
ベトナムにしてもよく分かってはいない。ベトナムでは違いは個の力で作りだされると思われている。チームが敗れたときには『どうして彼はちゃんとプレーしなかったのか』『彼はなぜあんなに酷かったのか』と批判される。
もちろんサポーターやメディアは、監督のようにチームの内部にはいないから、正常な反応ではある。チームの内と外はまったく異なるふたつの世界だ。だからメディアにも、コレクティブやディシプリンの理解が難しい。
例えばPSGのルイス・エンリケは厳しく批判されている。彼が構築したのはコレクティブなチームで、2位に勝ち点差10(註:2月25日時点で11ポイント差)をつけてリーグ首位を走っているにもかかわらず、人々は満足していない(笑)。
たしかにコレクティブな側面はメディアに容認されにくい。メディアが望むのは選手が個として輝くことであり、チームが輝くことであるからだ。そこには常に軋轢がある。さらにソーシャルアカウントの影響力が高まった今日では、監督の仕事はますます難しくなっている」
日本がW杯で上位に進出したいのであれば…
――そうかも知れません。