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ロッテ落合博満が怒った「日本のピッチャーはだらしない」あの落合が2時間休まず“ゴロ捕球”…2年連続三冠王、落合の知られざる“鬼練習”
posted2024/02/22 17:04
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
KYODO
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落合はなぜフォアボールにこだわったか?
1984年に、ロッテオリオンズのバッティングコーチに就任した広野功(元中日、西鉄、巨人など)は、落合のバッティング理論を理解することをみずからの使命とした。広野は酒好きの落合をバーに呼び出しては、彼のバッティング理論を聞き続けたのだ(前編参照)。落合は、技術面だけではなく、戦略面で他のプロ野球選手の中でも突出していたと広野は話す。
「落合は三冠王を取るにあたって一番難しいのは打率だと言いました。ホームランや打点は打てば数字が積み上がっていくが、打率は打席に立てば立つほど落ちると」
打率は4打数2安打であれば5割だが、次の試合4打数0安打であれば2割5分になる。仮に次の試合で4打数2安打でも、3割3分3厘と激増することはない。安打÷打数で算出される打率で数字を残すには、分母である打数をいかに減らすかが鍵になるのだ。
「だから、落合は『打数を少なくするためにフォアボールを作るんです』と。この試合はどれだけヒットが打てそうだから、いくつフォアボールを選べば打率が下がらないかという計算をしている。だから、選球眼が優れている。実際、彼の記録を見ると100近くフォアボールを選んでいる年が多いんです。あのフォアボールの多さがなかったら、首位打者はなかったでしょうね。ここまで考えている選手は当時はいなかったと思います」
事実、落合の現役生活20年のうち、リーグ最多フォアボールだったシーズンは9回を数える。三冠王になった1985年と1986年は、いずれも101個でリーグ最多だ。
“後輩思い”の落合「お前はよくやった」
ここで、落合のフォアボールへの意識の高さを感じられるエピソードも紹介しよう。1983年のドラフト2位でロッテに入団した田中力はこう証言する。