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守田英正発言「もっとアドバイスを」真意は行き詰まりを危惧か…日本代表取材記者が肌で感じた「ハリル解任→ボトムアップ型」の転換点 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2024/02/12 17:00

守田英正発言「もっとアドバイスを」真意は行き詰まりを危惧か…日本代表取材記者が肌で感じた「ハリル解任→ボトムアップ型」の転換点<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

攻守両面で奮闘した冨安健洋、守田英正らの言葉から考える、今後の日本代表の指針とは

 監督が代わったとしても簡単に失われないようなものを、今の代表選手たちは〈創造性〉を活かして作り上げた。もちろん、その〈創造性〉は、個人の力によるところが大きい。

 それはある意味で、属人的とも言える。

 ただ、その構造は限界を迎えた。

 イラン戦では相手がハイプレスにきたことで、パスをつなぐ「玄関」にあたるディフェンスラインはふさがれた。そのうえで、久保建英がベンチに下がって以降は、いわゆるパスの「出口」もなくなった。それも、後半の日本がマイボールの時間を延ばせず、相手の攻撃を受け続ける一因となった。

 久保という傑出した選手に代表されるように、現状の日本代表は個人の能力やパフォーマンスに依存している。もちろん、あの試合がリーグ戦のなかの1試合であれば、今の代表選手たちも、次の試合までに解決策を見いだせたかもしれない。ただ、アジアカップやW杯のようなトーナメントではそう上手くいかないのも事実として残った。

ターニングポイントとなった「ハリル解任」

 一方で監督やコーチ陣が解決策を見つけ、提示できたかというと……先に公開されたイラン戦後の記事にあるように、今回に関してはノーだった。さらに言えばイラン戦だけではなく、グループリーグのイラク戦でも同様だった。W杯優勝という目標を掲げるチームが2度にわたる失態を演じたのは、現状での限界をつきつけている。

 日本代表は、このアジアカップを経てどのように進んで行くべきなのか。結論に触れる前に、日本代表が現在のボトムアップ型組織になるまでのプロセスを再確認しておこう。

 ターニングポイントとなったのは、ハリルホジッチ監督の解任だろう。JFAの会長である田嶋幸三の著書『批判覚悟のリーダーシップ』(中央公論新社)のなかで、当時の内情が明かされている。ロシアW杯を翌年に控えた2017年の年末、「数名の代表選手」から会長は面会を求められたという。以下に当時の状況を記述した部分を一部引用する。

◆ ◆ ◆

「今の代表チームの状態は良くない。選手と監督の間に深い溝ができている。対話が成り立たない」

 彼らが真剣に考えた結果を、会長である私に直訴している。それがひしひしと伝わってきました。

 これは重く受け止めなければならない。

◆ ◆ ◆

 その後、紆余曲折はあったが、2018年3月末に行われたベルギー遠征での連戦が決定打となった。2戦目のウクライナ戦後のチームの状況を把握した後、「チームにはもはや司令塔となるべきリーダー、いわば監督が不在の状態となる寸前だった」と田嶋会長は判断し、監督の解任を決断したという(克明な描写は同書を読んでいただくのが最良だが……)。

 ハリルホジッチ監督は、選手からの解任動議とも呼べる進言に端を発して、最終的に会長が決断を下したことで失脚した。なお、あそこに至るまでの状況を取材させてもらった立場からしても、田嶋会長の決断についてはやむを得ないものだったと筆者個人は考えている。

西野→森保体制でボトムアップ型は宿命だった

 ただ、選手からの切実な訴えに端を発した監督交代劇だった以上、そこから先の日本代表が、ボトムアップ型の組織になるのは必然だったと言わざるを得ない。このとき選手の声は監督よりも重いものになっていたのだから。

【次ページ】 “守田発言”は三手先の行き詰まりを危惧したのでは

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