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守田英正発言「もっとアドバイスを」真意は行き詰まりを危惧か…日本代表取材記者が肌で感じた「ハリル解任→ボトムアップ型」の転換点
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/02/12 17:00
攻守両面で奮闘した冨安健洋、守田英正らの言葉から考える、今後の日本代表の指針とは
もちろん、その後を引き継いだ監督たちの手腕は評価されるべきだ。ハリルホジッチ監督の後任となった西野朗監督は選手の意見を上手く吸い上げる組織を構築しながら、「日本代表で戦う意味や誇り」を柱に、短期間でチームを上手くまとめあげた。そして西野氏の後を継いだ森保監督は、ボトムアップ型をさらに昇華させた。
ハリルホジッチから西野、森保と指揮官の襷(たすき)がつながれていくなかで、日本代表がボトムアップ型の組織になるのは「宿命」だった。
“守田発言”は三手先の行き詰まりを危惧したのでは
ただ、大きな転換点は、足音を立てて近づいているのではないか。
その象徴と言えるのが、チームリーダーの一人でもあり黒子役でもある、守田英正の発言である。
「正直、アドバイスや、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとか(いう視点と意見が)、もっとほしい」
その真意を推量すると、二手、三手先を読むことのできる守田だからこその――このままいけば行き詰まりになると危惧したメッセージだろう。実際、今大会では選手の意見と、監督や首脳陣たちとのパワーバランスが崩れているのでは、と思う場面があった。
例えば、試合中の修正ができなければ選手たちが「選手自身に責任がある」と話す一方で、森保監督は修正権限や責任が自分にあると強調した。一方で、大会中に初めて攻撃陣と守備陣に分けたミーティングが開かれたが――選手間で色々な決め事ができていくことを首脳陣が危惧したからでは、とも感じた。
こうなると、変革は不可避なのかもしれない。
監督が退任するか、原理原則を授けられるような戦術コーチを招き入れるか。選手に反旗を翻されるリスクを覚悟の上で、選手を納得させられる原理原則を監督が作り上げるのか。それとも原理原則を落とし込む練習も選手が考えていく「専門的コーチのいない部活」のような組織にするか……。
ボトムアップ型のチームによる1つの完成形が見えたからこそ、その光が浮き上がらせた漆黒の影に目をやらないといけない。
一つ言えることは、この状況を傍観するのはあまりにもったいないということだ。
イラン戦後、板倉滉と町田浩樹を交代する決断の難しさについて聞いた際、森保監督がしっかりと答えてくれた(第1回の記事で触れた)ように――日本代表のため、様々な人々が声をあげ、意見を交わし続けないといけない。決してあきらめないという意志だけが、私たちの日本代表を未来へと突き動かすはずだから。