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核心にシュートを!BACK NUMBER
W杯ドイツ・スペイン戦で劣勢→“三笘の1ミリ”神采配の深層…「おっしゃる通りです!」森保監督がアジア杯で記者に明かした“2つの決め手”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/01/31 17:52
アジアカップ、バーレーン戦前日記者会見での森保一監督
内容だけに目をやれば、前半終了までに0−3となってもおかしくないほど押し込まれる展開で、どうにか0−1で耐えていた状態だった。日本代表も森保監督も、極限まで追い込まれた状況で、判断を下したことになる。
指揮官はあの前半について、こう振り返る。
「前半は上手くいかなくて、あのままいったら『何ができて、何ができなかったのか』という部分で個のレベルが全くわからないまま終わってしまいそうで……。(そこで考えたのが)『結局、何も残らなかった』となるような試合をしてはいけないと。
個のレベルアップがあって初めて、組織として成り立つという考え方をしなければいけないです。W杯で勝っていくためには、そしてアジアで確実に勝っていくためには、個のレベルアップが必要かなという想いがあって……」
「日本代表の勝利」と、その先の視点で
前述の通り、森保はハーフタイムでの決断の理由について、「戦術的観点」ではマンツーマン気味の守備をしようと考えたからだとしている。
ただ、ここであの采配にたどりつけたのは、「日本代表の勝利」を願うことだけが理由ではなかったというのだ。
「後半、マンツーマンにしたのは『日本の個の力がどのくらいのレベルにあるのかなというのを、ここで、ちゃんと見極めておかないといけない』と(いう想いからだった)。勝つことを目的にやっていますけど、同時に、自分たちの力を測るという目的はいつもある。そこは逃げずにやっていこうかなと思っています。
ですので、仮に負けたとしても『デュエルの勝率がどれくらいだったか』、『これくらいまでは出来るようになった日本がいるんだ』、あるいは『こんなにも出来ない日本がいるんだ』とわかりたかった。その上で『では次にそこでレベルアップしていきましょう』と」
「おっしゃる通りです!」
つまり、こういうことだ。
極限まで追い込まれている状況で、「日本代表の勝利を願う気持ち」=「現在」と、「日本サッカーの発展を願う気持ち」=「未来」の両面から解決策を考えた。
そのためには、3バックへの変更が『両輪』が並び立つ状態だ、という結論に至った。つきつめて考えれば、理論もしょせんは方法論に過ぎない。最後は「日本サッカーのために」という信念や理念が背中を押したというわけだ。
だから、「『両輪』を見据えての決断が、最終的に大局観に立った決断につながったのですか?」と問うと、森保監督は力を込めた。
「おっしゃる通りです!」
そこには、森保監督の決断の基準とオリジナリティがあったということなのだろう。
さらに――W杯クロアチア戦で涙をのんだ「PK戦」に関する思考にも、感じることがあった。
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