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「クビでも仕方がない」箱根駅伝“まさかのシード落ち”…その夜、中央大・藤原監督は4年生に頭を下げた「青学大を抜く、幻のレースプラン」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byWataru Sato
posted2024/01/31 11:21
中大・藤原正和監督。箱根駅伝から3週間が経ち、NumberWebのインタビューに応じた
「12月に限ったことではなく、駅伝シーズン全体の反省があります。出雲で7位、全日本でも4位に終わってしまい、チームとして勢いを出せませんでした。そこで選手たちに自信を持たせるため、練習の質、強度を高めに設定したんです。これだけ出来るんだから、自信を持っていいんだと。実際、12月上旬の合宿ではハーフの距離をビルドアップ(注・だんだんペースを上げていく手法)で64分台で走る練習も組み込みました。選手たち、こなせていました。ただ、それによって体に負担がかかり、免疫力が低下していた可能性はゼロではありません。私のマネージメント力が不足していた部分だと思っています」
原因を追究していくと、キリがないのだ。
藤原監督が話す通り、シーズン全体の流れ、合宿中のメニューの強度によって、チームの状態は変わる。それほど、陸上長距離は繊細な世界だといえる。
理事会「今回のことは事故だと思って…」
レースや強化過程を振り返りながら、藤原監督には試練となる場があった。
中央大の理事たちを前に、レース結果を報告しなければならないのだ。
「毎年、箱根駅伝のあとには中央大学の理事会、理事懇談会といった、いくつか報告の場があります。去年、一昨年は結果が良かったこともあり、意気揚々と向かいましたが、今年はクビだと言われても仕方がない。その覚悟で臨みました」
藤原監督は年末の状態を包み隠さず報告し、こうした結果になってしまったことを理事たちの前で詫びた。
「ある理事の方から、『状況は分かりました。もう一度、こういうことがあったらクビです。が、そういうことはないでしょう。今回のことは事故だと思って……今後とも強化を進めてください』というお言葉をいただきました。物事をハッキリと言ってくださる方なので、ありがたいと思いました」
理事会で続投が決まったのである。
「私以上に4年生がつらいでしょう…」
実は過去に一度、藤原監督は理事会で「針の筵」に座る思いをしたことがあった。