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「大阪桐蔭に“0対40”で大恥をかく…」21世紀枠・別海のウラ話「町長に直訴…牛の品評会場が練習場に」センバツ決定の瞬間に完全密着 

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柳川悠二

柳川悠二Yuji Yanagawa

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posted2024/01/28 06:00

「大阪桐蔭に“0対40”で大恥をかく…」21世紀枠・別海のウラ話「町長に直訴…牛の品評会場が練習場に」センバツ決定の瞬間に完全密着<Number Web> photograph by Yuji Yanagawa

センバツ21世紀枠に選ばれた別海(北海道)。発表当日を記者が完全密着した

 とうてい納得することができず、当時の父母会も4000を超える嘆願書を集めて続投を訴えたが、翌年3月に解任の時期が延びただけで、結局は学校を追われた。その年の夏、教え子たちが北北海道大会を制し、甲子園に出場した。それが嬉しくもあり、悔しくもあった。そして、2年間にわたって小中学生に野球の指導を行ったあと、2016年に「別海を盛り上げて欲しい」という町役場からの依頼を受け、別海高校の監督となった。赴任時にいた野球部員はわずか4人の選手とひとりのマネジャーだった。

「別海高校を率いて8年で甲子園にたどり着いたことは、私の中では決して遅くないのですが、武修館時代に甲子園に連れて行ってあげられなかったことを思えば、ずいぶんと長かったように思います」

冬の練習は「農業用ビニールハウス」で…

 オホーツク海に面した別海は札幌などに比べて年間の積雪量は少ないものの、年間の平均気温は5.4度と極寒の地となる。1年のうち、およそ5カ月はグラウンドを使った練習ができない。

「グラウンドが使えるのは、4月の2週目ぐらいから、11月の1週目ぐらいまでです。冬季期間は、5メートル×20メートルの農業用ビニールハウス内での練習が中心ですね。グラウンドが使えない期間にどうやって練習をするのか、毎年、毎年、頭を悩ませています。身体作りをするのに、北海道は一番良い環境なんです。丈夫な身体を作りたければ、雪の上を走らせ、ウエイトトレーニングをガンガンやればいいんですから。だけど、そんな練習だけだと野球観がなくなってしまう。だから雪が降る中、外でノックをすることもありますし、野球につながる工夫をした練習を心がけています」

 島影監督は全道に展開するコンビニチェーン「セイコーマート」のしまかげ中春別店を家族経営しており、できたてのおにぎりなどを提供する「HOT CHEF」の準備のために監督も3時には起きるという。そして、店の駐車場に積もった雪の排除に使うトラクターを学校に運んで、グラウンドの除雪にも監督自らがあたる。

「ところがグラウンドの雪をすべて取り除いてしまうと、グラウンドの土が奥底まで凍ってしまって、春になってもなかなか溶けず、4月の第2週を過ぎてもグラウンドがぐちゃぐちゃの状態で使えないことがある。どれくらいの範囲の雪を除雪して、どれくらいの雪を残して踏み固めれば4月から練習ができるのか。実はいろいろとテクニックが必要なんです(笑)」

【次ページ】 町長に訴えた「今のままでは大阪桐蔭に0対40で負ける」

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