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核心にシュートを!BACK NUMBER
失態のイラク戦翌日「そういう時こそ日本は力を発揮するんじゃないっすか!?」堂安律と森保Jの“テレビに映らない危機感”「声出して!」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2024/01/21 17:02
ベトナム戦の堂安律。カタールW杯でも見せた度胸を、アジア杯で見せられるか
前日の試合のスタメン組と45分プレーした冨安は、ホテルでのリカバリーのみで、そのまま静養に努めることになった。当初は全員が練習場に来る予定だったのだが、急きょ変更になった。選手たちへのダメージを心配してのことだろう。
それゆえ、グラウンドに立つ選手たちの人数はいつもよりも12人も少なかった。
普段と少し違ったのは、それだけではない。堂安と中山雄太がいちはやくグラウンドに出てきた。思うようにチームを助けられていない悔しさを、パワーに変えようとする意気込みは伝わってくる。
「声出して! 声出して!!」
人数が少ないために、攻撃陣と守備陣に分かれて別のメニューに取り組む時間帯があった。
守備陣によるビルドアップの練習は毎熊晟矢、渡辺剛、町田浩樹、中山の4人に、U-19世代から同行しているトレーニングパートナーの選手が加わった。
「声出して! 声出して!!」
戦術的な指示だけではなく、チームメイトを鼓舞するような言葉も積極的に発していたのは町田だ。この場面を見て思い出したのは、元日のタイとの親善試合のあとに、町田が漏らしていた言葉だった。
「今日は僕がディフェンスラインの中では、経験がある立場でした。ただ、みんなを上手く動かせない場面があったので、そこは修正したいです。ディフェンスラインの設定、ボールを失った時のポジショニング。そういった基準を僕は示さないといけないので」
練習が始まっておよそ50分。堂安が一人、練習を切り上げた。
途中出場ながら過去2試合で長くプレーした身体への負荷を考慮されたのだろう。堂安はロッカールームのある建物の階段に腰をおろし、チームメイトが汗を流すエリアから目は離さないまま、広報スタッフと言葉をかわしていた。広報という仕事を全うするためだろうか。そのスタッフは、昨年3月に自身初の著書『俺しかいない』が出てすぐに、あの本を読みこんでいた。そんな信頼を置く人物と話をしながら、グラウンドに目をやる堂安の表情はとても穏やかだった。フルパワーで戦う今後の試合を前に、あえてそうしているのだろうか。
190cmの町田が示した“覚悟”
そこから20分ほどで、チーム全体の練習は終わった。
ロッカールームの少し手前に立っていたのは森保一監督だ。ピッチから引き揚げてくる選手たちに視線を送っている。
スパイクを脱ぎ、ソックスのまま歩いてきた町田を呼び止めた監督は、身振り手振りをまじえ、2分ほど話し込んだ。町田の身長はフィールドプレーヤーのなかで最長となる190cmだ。