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山川穂高32歳⇔和田毅42歳ではなく甲斐野央27歳“プロ初対戦は西武・山川”の因縁…「FA人的補償で電撃移籍」工藤公康、内海哲也や田中正義も
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/12 17:03
山川穂高と甲斐野央。FA移籍と人的補償でそれぞれ新天地へと移る
本来なら2023年シーズンをレギュラーで出場し続ければ――FA権を取得し、前年オリックスに移籍した森友哉と同様、大手を振って意中の球団に移籍できたはずだ。
しかし彼は、謹慎処分で2023年をほぼ棒に振った挙句、特例的にFA権を認められたものの、世間の冷たい視線の中、ソフトバンクに移籍した。ソフトバンクの首脳陣、とりわけ球界のレジェンドと言える王貞治球団会長にも、厳しい批判の声が浴びせられた。
山川自身が言っているようにこの問題は「野球で頑張ることで、汚名を挽回できる」ようなものではない。世間の評価が変わるか否かは、今後の彼の生き方次第か。
過去には大物選手がFA人的補償に選ばれたことも
なお今回は和田ではなく甲斐野となったが――過去には人的補償に大物選手が選ばれて移籍したケースがいくつかある。
・2005年 江藤智:豊田清の人的補償で巨人から西武へ
・2006年 工藤公康:門倉健の人的補償で巨人から横浜へ
この2人はFA移籍をしたうえで、自分自身がFA移籍の人的補償になった。
・2012年:馬原孝浩 寺原隼人の人的補償でソフトバンクからオリックスへ
・2018年:内海哲也 炭谷銀仁朗の人的補償で巨人から西武へ
・2018年:長野久義 丸佳浩の人的補償で巨人から広島へ
大物選手の人的補償での移籍は大きな話題となるが、これらのベテラン選手は移籍先で、ひたむきにプレーをし、若手選手の手本となった。それこそが「一流選手のプライド」だったのだろう。
また2022年にFA移籍でソフトバンクに加わった近藤健介の人的補償で、日本ハムへと移籍した田中正義が23年シーズンに25セーブを挙げるなど、プロ7年目にして飛躍を果たした。
今回のFA移籍、人的補償にはいろいろな見方ができるだろうが――甲斐野という若くて有望な投手が、ステージを変えて再起する機会となるのなら、それは良いことかもしれない。
2024年は、置かれている立場は全く異なるが、2人のプロ野球選手の「再起のシーズン」になる。