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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「そうか、7年もかかっちゃったんだ…」人的補償で日本ハム移籍、“7年前のドラ1”田中正義が涙を流した日…“正義執行人”が語る、今季の飛躍
posted2023/11/07 11:02
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Kiichi Matsumoto
ヒーローインタビューで見せた涙
涙が流れ出た。あとからあとから、堪えきれない思いが流れ出た。あの喜びの瞬間を、田中は今も忘れられないと言う。日本ハムに移籍して迎えた今年4月26日のオリックス戦。9回に登板して打者3人を抑え、プロ入り初セーブを挙げた。新天地の本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOのお立ち台でその心境を問われると思わず言葉に詰まり「長かったな、っていう思いです」と涙を流した。
「インタビュアーの方が、『7年目で初の……』とおっしゃったんです。それを聞いた時に、そうか、7年もかかっちゃったんだ、と。込み上げてくるものがありました。僕は泣きやすいんですけど、人前であんな風に涙を流したのは初めて。お立ち台は初めてでしたし、あんな景色を見ることができたのは嬉しかったです」
もっと笑顔を見せなさい
今年1月、人的補償で日本ハムへの移籍が決まった時、田中はすぐに「チャンス」と捉えたという。何度も壁にぶつかり葛藤してきたソフトバンクでの6年間。その懊悩を断ち切り、新しい自分を構築する「チャンス」だ、と。新しいチーム、新しい仲間たち。個性的なオーラを放つ新庄剛志監督からは、「もっと笑顔を見せなさい」と背中を押された。
「楽しく野球をやるという感覚は今までの自分にはなかった。今までは、一軍で結果を残さないと何も始まらない、とそれだけ思ってやってきたので。新庄監督なりに僕の性格を見て、色々と考えてくださり、声をかけてくれるんだなと思います。そのありがたさを感じて、それに応えたいなという思いがあります」
ナポレオンの言葉だったかな
意識を変えるきっかけとなった「言葉」との出会いがあった。新しいスタートを切った今年2月の沖縄・名護キャンプ中に『本当の勇気は「弱さ」を認めること』(ブレネー・ブラウン著)という本を熟読し、自分の中の「弱さ」と向き合った。