Number ExBACK NUMBER
箱根駅伝で四半世紀以上優勝なし…留学生ランナーは優勝への近道なのか? マヤカ、ダニエル、モグスから見る留学生の箱根駅伝ヒストリー
text by
工藤隆一Ryuichi Kudo
photograph byAFLO
posted2024/01/02 11:04
箱根駅伝の往路区間で毎年激走を見せる留学生ランナー。しかし、彼らを擁した大学が近年、優勝からは遠ざかっているという
ちなみにマヤカは、女子マラソン選手の盛山玲世と結婚、2005(平成17)年には日本国籍を取得、現在は桜美林大の監督として箱根駅伝出場を目指している。モグスとダニエルはその後、実業団チームに所属したあと、現在は引退している。
かつて箱根駅伝では「ごぼう抜き」が一般ファンにとっての見所のひとつだった。そして、その主役はアフリカからの留学生の印象が強い。箱根駅伝で優勝やシード権獲得を目指すためには、留学生は手っ取り早い「即戦力」と見られていた。プロ野球における「助っ人外国人」と同じ位置づけである。
留学生を擁して総合優勝を成し遂げた大学が出現していない
しかし、現実はそれほど甘くはなかった。これまで留学生を擁して優勝したのは、山梨学院大1校のみ。それもいきなりアフリカから連れて来たのではなく、日本の風土とチームに溶けこむように付属の高校に入学させ、じっくり時間をかけて、チームの一員になるように育成してきた戦略が結実したのだった。
山梨学院大が最後に優勝したのは1995(平成7)年の第71回大会。このとき2年連続3度目の総合優勝の立役者は、前年同様、ケニアからの留学生ステファン・マヤカだった。つまり、箱根駅伝ではここ四半世紀以上のあいだ、留学生を擁して総合優勝を成し遂げた大学が出現していないのである。
本番で走れるのはひとりだけというルール変更
留学生の出場は「手っ取り早く好成績を確保するため」の“狡い”戦略だと見る向きも確かにある。しかし、どの大学もひとつでも順位を上げたいし、箱根駅伝に縁のなかった大学は、そもそも憧れの箱根駅伝に何としても出たいのである。だから、放っておくとメンバーの半分近くが留学生で占められてしまう危惧も、あながち冗談ではなくなってしまう。まるでモンゴル出身者で番付の上位が占められていた、一頃の大相撲状態になりかねない。