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《2023ドラフト新潮流》なぜ「社会人」より「独立」だった?「総合力は社会人ほど高くなくても…」スカウトが惹かれた“独立リーグの魅力”とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/11/18 17:02
メディアを賑わせた錚々たるメンツが並ぶ「ドラフト2位指名」に今年は2人の独立リーグ出身者の名前が
さらに驚いたのは、支配下ドラフトの下位指名でも、独立リーグ戦の選手たちが続々と指名されたことだ。指名された順に、
◼️徳島インディゴソックス・宮澤太成(西武5位・投手・長野高→北海道大在籍)
◼️新潟アルビレックス・伊藤琉偉(ヤクルト5位・内野手・東京農大二高→東京農大中退)
◼️茨城アストロプラネッツ・土生翔太(中日5位・投手・横浜高→桜美林大)
◼️徳島インディゴソックス・井上絢登(横浜DeNA6位・外野手・久留米商高→福岡大)
4人の選手が支配下ドラフトで指名されている。
下位じゃないか、いちばん最後じゃないか……といってはならない。
いちばん最後なら、その後の「育成ドラフト」で指名したっていいじゃないか。そのほうが、契約金だって3分の1ぐらいで済むだろう。
それなのに、どうして「支配下」で指名したのか、指名せざるを得なかったのか。
それは、ヨソに獲られたくなかったからだ。
1位指名も、どうしても欲しい選手。支配下ラスト指名も、やはり、どうしても欲しい選手だったのだ。
「独立の“選手の質”が昔とは全く違う」
最後に指名された井上絢登選手のあとに、8人の高校、大学、社会人選手が指名されている。その中には、150キロ前後の速球を投げる大山凌(投手・東京国際大)や、11月の社会人日本選手権でヤマハを7回11奪三振1失点に抑えた古田島成龍(投手・日本通運)、佐々木朗希二世と評したいほどの大器・大内誠弥(投手・日本ウェルネス宮城高)がいる。
「入ってくる選手のポテンシャルが、以前と比べたら全然違ってるのは、間違いないですね」
あるスカウトの方の「見解」は、こうだった。
「独立といえば、以前は、高校、大学でレギュラーになれなかった選手や、はっきり言って脱落組。大学や社会人で、いろいろあって、独立に落ちてくる。失礼な言い方ですけど、それが現実でしたからね。それが、今は、大学や社会人に進めるレベルの選手が、『1年、2年でプロに!』っていうモチベーションで、何人も独立に進みますから、昔とは選手の質が全く違いますよ。前は担当者だけが、念のためにって見に行く程度だったのが、今は、部長クラスのスカウトが来てるのも珍しくないですから」
昨年、取材でうかがった独立リーグのチームの監督さんが、こんな話をしてくださった。
「正直、いろんな選手が来ますよ。元プロ、社会人をクビになったのも来るし、高校、大学から入ってくる選手だって、実力不足や故障で行き場がなくて、しょうがないから独立でいいや……みたいなのもね。だから(選手の)出入りは激しいですよ。シーズン中でも戦力外になるし、平気で練習生に落とされる」