マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトウラ話…“高校BIG3”のひとりはソフトバンク「育成3位」そのメッセージは…?ドラフト全指名を検証する《DeNA・ソフトバンク・広島編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/09 11:02
ソフトバンク育成3位指名の佐倉侠史朗内野手(九国大附高・184cm103kg・右投左打)
3球団の抽選を見つめる彼の顔が、テレビ画面に大写しになる。
いい目、してるなぁ。
思わず、口にしてしまった。
切れ長の目が、まばたきもせずに、その瞬間を見届けようとしている。周囲に多くの人がいるのに、異様な雰囲気の中にいるはずなのに、彼は完全に「カプセル」の中に入っていた。
5年後のホークスのエースは決まったようなもの?
実戦のマウンドで、打者と対峙している時と同じ、「獲物」を狙うオオカミのような目をしていた。
この目だけで十分だ。この目で、プロのサバイバル競争を何事もないように乗り越えていくはずだ。球速、変化球、コントロール、守備、けん制、投球テンポに勝負根性。投手としてすべての仕事ができるオールマイティ。
どんなに遅くても5年後、ホークスのエースは決まったようなものだ。
3年連続、オリックスに「王者」の地位を奪われたソフトバンクホークスだけに、今年のドラフトは即戦力性を優先させて「一軍強化」を図った。
プロ一軍の平均値が2400回転といわれる中で、2位・岩井俊介投手(名城大)は、学生ジャパンの候補合宿で140キロ後半の速球が2600回転という驚異の数値をマークして一気に注目された。
豪快な腕の振りのスピードと運動量も、パッと見てすぐにわかる非凡さだから、150キロ台もあっさりクリア。同様の猛烈な腕の振りから、140キロ台のフォークが勝負球になる。
5位・澤柳亮太郎投手(ロキテクノ富山)。2400回転後半の速球に、カーブの落下数値も驚きの数値だと聞いている。
ただ、ちょっと待て。明治学院大東村山高→明治学院大の球歴から、いちばん鍛えたい時期に、どこまで追い込んだ鍛え方が出来ているか。今年度で24歳になるところからのプロ生活……すぐに一軍の役に立たなくてはと焦ってはいけない。最初の1年は体力強化の時間と腹をくくるのが、急がば回れでは……と。これは「お節介アドバイス」なのだが。
学生生活最後の試合で、相手左翼手を一歩も動かさなかったライナー弾で有終の美を飾った3位・廣瀬隆太(内野手・慶應義塾大)。チームメイトとなる柳町達外野手、正木智也外野手とは高校(慶應義塾高)、大学(慶應義塾大)直系の後輩になるが、特に正木選手とはポジションもかぶりそうで、これまで経験したことのない熾烈なサバイバル競争となる。
4位・村田賢一投手(投手・明治大)は「投げる哲学者」みたいな内面を持つ異色の投手として興味深い。
「理想の投球は27球の完全試合。この打者には、このボールなら打ち取れる……だけじゃない。このボールで、どこへどんな打球を打たせるか。そこまで考えた上で投げています」