巨人軍と落合博満の3年間BACK NUMBER

巨人まさかの25失点大敗、ナベツネ激怒の事件「誠に遺憾である」…落合博満40歳が“最悪の空気”だったジャイアンツをわずか一振りで変えた夜 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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posted2023/10/22 11:04

巨人まさかの25失点大敗、ナベツネ激怒の事件「誠に遺憾である」…落合博満40歳が“最悪の空気”だったジャイアンツをわずか一振りで変えた夜<Number Web> photograph by KYODO

1994年1月31日、翌日からのキャンプに備え、巨人ナインとともに宮崎入りした落合博満40歳

 落合も3月26日の西武戦で移籍第1号を放ったが、ダイエー戦で巨人オープン戦史上ワーストとなる25失点の記録的な大敗を喫するなど、6勝12敗、勝率.333。12球団中11位の成績で長嶋巨人はオープン戦を終えた。順位予想でも評論家たちの巨人に対する評価は低く、4月3日にセ・リーグ6球団参加の巨人軍創立60周年記念トーナメントで、優勝をさらった野村ヤクルトのV3を予想する声が大勢を占めた。

 そんな状況で、ある事件が起きる。

 日本テレビ系列のプロ野球中継「'94劇空間プロ野球」のポスターが発表されたのだが、ユニホーム姿の長嶋茂雄が引退試合で両手に花束を持っている写真の上に、大きく赤い「×」印が描かれ、さらに赤字でこんなコピーが書かれていた。

「巨人を棄てる。」

 サブコピーには長嶋監督の署名入りで「巨人軍は永久に不滅です。と、私が叫んだあの時から二十年。今年、私は、巨人を棄てます。サビついた栄光に、カビのはえた伝統に、しがみつくのは、もうヤメです」と過激な言葉が続き、「巨人軍は、まっさらの新球団としてスタートします」と締められていた。しかし、この広告は大問題となる。

 開幕直前の4月5日、読売新聞社主催の巨人軍激励会の席上で、渡邉恒雄社長が、「伝統を築いてきた多くの監督、コーチ、選手そしてファンへの冒涜となる。こういうコピーが巨人軍の最高経営会議の知らぬ間に発表されたことは誠に遺憾である」と激怒したのだ。そして、「巨人を棄てる。」のコピーは、わずかオンエア3日でお蔵入りとなった。ちなみに自らの写真に「×」印のついたポスターを見た長嶋監督は、苦笑いまじりに、こう言ったという。

「ウーン、一番過激じゃないですか。まあ、宣伝の世界のことですから、こういうのもいいでしょうけど。ただ我々はとなると、棄てるわけにはいきませんからネ」(週刊ポスト1994年3月25日号)

いきなり度肝を抜く“落合の一振り”

 チーム状態は上向かず、グラウンド外でもゴタゴタ続き。頼みの落合も、オープン戦後半を11打席無安打で終え、400勝投手の金田正一は年齢的な衰えを指摘した。

「オープン戦の落合の打席を見たが、昔に比べて打つポイントが(前になり、打ち方が)すごくせっかちになってしまっているのう。あの程度のバッティングなら、ピッチャーが腕の振りを遅らせたりすることでどうにでも料理できる。昔はもっと引きつけて打っていたのに」(週刊ポスト1994年4月15日号)

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