核心にシュートを!BACK NUMBER
「3ポイント決定率10分の0」…なぜ富永啓生のシュートは入らなかった? それでもチームメイトが賞賛する“納得のワケ”《バスケW杯オーストラリア戦》
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2023/08/30 17:01

決められなくても最後まで3Pシュートを放ち続けた富永の姿勢はチームの戦術の象徴でもあった
守備ではマンツーマンではなく、ゾーンディフェンスを採用することで、相手の勢いを止めた。攻撃では、ペースを早めるとともに、全員がスクリーンを有効に使えるようにもなった。
何より大きかったのは、比江島や河村による個人技頼みになっていたせいで止まっていた足を各選手がしっかり動かし、走り回ったことだ。
これにより攻撃のペースを早め、積極的に3Pを打つことができた。ペースを早めれば、日本のシュートチャンスが増えるだけではなく、格上オーストラリアにもシュートチャンスを与えることになるのだが、それは覚悟の上だ。
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現在の日本代表のバスケは、3Pシュートを多用しつつ、速いペースでの攻撃を続けること。第3Qの日本は、速攻を中心に2ポイントのシュートを81.8%の超高確率で決めただけではなく、重視している3Pを4本も沈めることができた。
そんな高速バスケを貫いた結果、どうなったか。
第3Qでオーストラリアに大量30点も許すことになった一方で、日本は35点も叩き込んだ。この10分間は優勝候補を相手に完全に上回ったのだ。
なぜ格上相手にも「速いペースでの攻撃」を続けるのか?
バスケの統計を重視するトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は、世界のスタンダードも研究してきた。そこで強豪国の1回の攻撃あたりの平均得点を1.2点程度に抑えられるような守備を目指している。そのうえで日本が3Pを多用し、それを40%以上の確率で決められれば――1回の攻撃あたりの平均得点が1.2点を上回る。そうすれば必然的にゲームにも勝てるというプランを立てている。
こうした戦いについてNBA選手の渡邊雄太はこう解説している。
「うちのバスケットは、弱い相手にでも、ころっと負けてしまうような……悪い言い方をすればギャンブルみたいなバスケットではあります。でも、3Pの確率を上げれば、どのチームにも勝てるというバスケットをやっている。だからこそ自分たちに照準をあわせ、自信をもってやっていくだけだと思っています」
では、この第3Qの日本の3Pの確率は?
8本放って4本を沈めた。成功率は実に50%。チームが求めている通りの成果が出た。
もちろん、理想としている戦いが“後半の”第3Qに生まれたのは偶然ではない。チームの精神的支柱である渡邊は言う。
「体力がお互いにある時間帯は、地力の差が、多少なりとも出てしまうこともあると思います。ただ、自分たちは練習を他のチームよりメチャクチャ(多く)やっている分、後半は体力で勝って、先手をとっていけるんだと思います」
実際、後半の立ち上がりにはオーストラリアとの点差が最大27点まで開いたにも関わらず、“自分たちのバスケ”を披露した日本は、第4Qの残り4分3秒の時点までに13点差まで追い上げたのだった。