野ボール横丁BACK NUMBER
「四国の高校野球は弱くなった」は本当か? 明徳義塾・馬淵史郎監督にズバリ直撃…“全国最下位”のチーム数・高知の驚くべき甲子園勝率
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/18 11:00
明徳義塾の名将・馬淵史郎監督に聞く「四国の野球は弱体化したのか?」(写真は今夏甲子園に出場した徳島商)
馬淵 投手力もあったと思うけどね。それと、近年は暑さが尋常じゃないから、組み合わせや日程の妙もありますよね。昔は1回戦から戦っても、いい試合ができれば、それが勢いにつながることの方が多かった。でも今は2回戦から登場した方が有利でしょうね。
――今年もそうですが、この暑さは、いったいどこまでいくのだろうという感じがしますよね。
馬淵 暑い。大阪は特に暑いですよ。高知だったら、日陰におったら風が通るから。でも大阪は風が通らないんですよ。
「絶対エース」より「打たれ強いタイプ」
――2002年夏、明徳が初優勝したときは、エースの田辺佑介が全6試合をほぼ1人で投げ切りましたが、田辺のような投手がいても難しいでしょうね。
馬淵 いや、むしろ、ああいうタイプじゃないと難しいと思いますよ。剛球投手みたいなタイプは、3回戦ぐらいで潰れてしまう。田辺は完封しても7安打くらいは打たれるんですよ。打たれ強いタイプだった。やっぱり、勝ち上がるには圧倒的な力で完璧に抑え込むような投手よりも、粘り強いタイプの方がいいんですよ。それくらいの投手の方が守備も鍛えられるし、打撃陣も何とかしようする。スーパーエースみたいな投手が出てくるとチーム自体が彼1人に頼り切ってしまって、全体のバランスが悪くなることもありますからね。
バッターもそう。すごい4番がいるからって勝てるものでもない。僕の持論なんですけど、打線は1番と3番を打てるような打者がズラリと並んでいる方がいい。足が速くて、何十本もホームランを打つ力はなくても、ツボにはまれば一発を打つ力はあるという。2002年夏のチームもちびっこ軍団でしたけど、あの夏、スタメン9人のうち8番と9番以外はみんな甲子園でホームランを打ったから。勝つべくして勝った。本当に理想的なチームでしたね。
――明徳義塾、そして四国の野球には、ルール内で相手の隙をつく「ずる賢さ」があった。そうしたプレーはクリーンな野球が求められる現代にあって“古い”のか? つづく#2では「勝利至上主義」の問題に切り込んだ。
〈つづく〉