甲子園の風BACK NUMBER
4エラーの仙台育英監督「奇跡みたいに1点しか…」“大阪桐蔭をねじ伏せた”履正社エースが号泣「共有したのに頭から消えた」ワンプレーとは
posted2023/08/17 20:14
text by
間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
敵将は「奇跡」と表現した。しかし、履正社ナインは確かな力の差を痛感した。スコアは3-4。2019年以来の優勝を目指した履正社は、夏の甲子園連覇を狙う仙台育英に、わずか1点届かなかった。近いようで、その背中は遠かった。
須江監督「奇跡みたいに1点しか取られなかった」
スコアボードの右隅に刻まれた数字は「4」と「0」。この試合、仙台育英は4つの失策を犯した。失点につながる記録に残らない守備の乱れもあった。1つのミスが命取りとなる野球の流れ、甲子園の怖さを知っているからこそ、仙台育英・須江航監督は厳しい表情で試合を回想した。
「試合前半に守備のミスがたくさん出て、あそこで奇跡みたいに1点しか取られませんでした。運命というか、この試合に勝てと神様が言ってくれていると選手に話をしました」
須江監督が「奇跡」、「神様」と振り返った場面は2-2で迎えた3回の守備だった。履正社の先頭打者、西稜太選手にレフト前へ安打を許し、左翼手が打球処理にもたつく間に二塁まで到達された。犠打で1死三塁とされて3番・近沢賢虎選手と対峙した仙台育英は内野手を前進させず、1点を覚悟した守備態勢を敷いた。
近沢の打球は仙台育英の狙い通り、定位置に就くショート正面へのゴロ。ところが、プロも注目する主将の山田脩也選手が一塁へ悪送球して、勝ち越し点を許した。さらに、続く4番・森田大翔選手の打球がサードへのゴロとなるが、三塁手が一塁へ悪送球する。負の連鎖が止まらず、1死一、三塁のピンチを招いた。
スクイズ、エンドランが決まらず…監督は声を落とした
「何としても4点目を取りたかった」
試合後、こう話したのは履正社・多田晃監督だ。初球。選んだサインはセーフティスクイズだった。走者一、三塁でファーストベースについている一塁手の方向へ、5番・西田大志選手はバントで打球を転がした。しかし、打球はラインの外に転がってファウルとなる。
続く、2球目。多田監督は戦術をエンドランに切り替えた。
スクイズのように三塁走者も投球と同時にスタートを切る一手だった。しかし西田は外角の投球に空振りし、三塁走者は三塁と本塁の間に挟まれてタッチアウト。相手のミスでつくったチャンスを生かせず、試合の流れを大きく手繰り寄せる4点目を奪えなかった。
指揮官はこの場面について、声を落とした。