モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
マルケスの不屈の心がついに折れた…ドイツGPで転倒5回の真相と、4人中3人が負傷欠場のホンダのレース運営責任
posted2023/06/23 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Getty Images
9日ほど前の記事でMotoGPクラスに参戦する日本メーカーの悲惨さを書いたばかりだが、イタリアGPからの連戦となった第7戦ドイツGPでは、その悲惨さに拍車がかかった。とりわけマルク・マルケスの惨状は、低迷するホンダの現状を象徴するものだった。
ドイツGPが開催されるザクセンリンクは、ホンダのエースであるマルケスがもっとも得意とするサーキットである。2010年に125ccクラスで優勝したのを皮切りに、11年と12年はMoto2クラスで2連勝。そして、MotoGPクラスにスイッチした13年から19年までは、ホンダRC213Vで7連勝を達成している。
2020年はコロナ禍によりドイツGPは開催されなかったが、この年の第2戦スペインGPでマルケスは右腕上腕を骨折し、欠場を続けることになる。翌21年の第3戦ポルトガルから復帰したマルケスは第8戦ドイツGPで復帰後初優勝を達成し、11大会連続優勝という大記録を打ち立てた。昨年は右腕の再手術のために出場しなかったが、ザクセンリンクはそれほど得意としてきたサーキットである。それだけに、マルケスにとって2年ぶりとなったドイツGPは、苦戦が続くホンダRC213Vの現状のパフォーマンスを知る絶好の機会と目されていた。
その結果は悲惨を通り越し、非常事態と言ってもいいものだった。
なぜ5回も転倒したのか
マルケスは金曜日のプラクティスで最初の転倒を喫し、土曜日の予選Q1とQ2で合計3回転倒。そして決勝が行われる日曜日朝のウォームアップでも転び、週末を通して合計5回も転倒した。
これまで、どんな状況でも不屈の闘志で走り続けてきたマルケスだが、決勝日の朝は転倒した場所で椅子に座って動かなかった。その後の検査でマルケスの左手親指に小さな骨折が見つかったが、そのときのマルケスは手の痛みで動けないというより、もうやるだけのことはやった、もうこれ以上は無理という感じに見えた。デビュー以来マルケスが初めて見せた「心折れる」シーンであり、この後マルケスは決勝レースの欠場を決めた。