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ホンダ不振の真相ついに判明…「原因は車体ではない」中上貴晶の言葉に読み解くRC213Vのウィークポイント
posted2023/07/13 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
今季のMotoGPクラスで目立つのは日本メーカーの不振だ。とりわけホンダの低迷は深刻で、このコラムでは過去2回連続でその状況を伝えてきた。エンジンなのか、車体なのか、電子制御なのか、低迷の原因が何なのか誰もが気になるところであるが、序盤8戦を終えたところで真相がようやく見えてきた。この記事ではその核心に触れたい。
ドイツGPではホンダのエースであるマルク・マルケスが5回の転倒を喫し、決勝レースを欠場した。チームメートのジョアン・ミル、そして、LCRホンダのアレックス・リンスも負傷で欠場し、ホンダ勢2チーム4台中3人のライダーが戦列を離れる異常事態となった。
そんな状況で中上貴晶が14位になり、孤軍奮闘でなんとかポイントを獲得した。昨年のドイツGPはホンダが40年ぶりにノーポイントという歴史的敗北を喫したレースであり、2年連続の屈辱を中上がなんとか回避した格好だ。そして連戦となったオランダGPで、中上は今季ベストの8位でフィニッシュした。
中上はマルケスがテストをしてきたカレックス製の車体でオランダGPに挑んだ。プラクティス、予選は2023年型ホンダRC213Vのスタンダードと比較しながら走り、スプリントと決勝レースではカレックス製を選んだ。
決勝は気温30℃、路面温度47度と今季一番の暑さになり、22台中完走14台という厳しい戦いとなった。その中で中上は予選14番手から好スタートを切って8位でゴール。「順位は満足できるものではないが、今季イチバンのレースができた」と、今季初めて笑みを浮かべた。
カレックスのフィードバック
中上はカレックス製の車体で走った効果について、こう語ってくれた。
「ドイツで初めてカレックスを使ったが、天候不順や転倒などで決勝で使うのは(オランダGPの舞台となる)アッセンが初めてだった。ここでやっと2つのシャーシーの比較テストが出来たけど、正直、ほとんど変わらなかった。確かにフィーリングは違うが、その違いは微々たるもの。カレックスは、低速コーナーで多少フロントのフィーリングがわかりやすく、高速コーナーではスタンダードの方がしっかりした感触があるというもの。ただ、どちらもタイムに影響するものではなかった」
その違いについて中上は、すでにカレックス製の車体をテストしているマルケスにじっくり話を聞いたのだという。そのときのことを語った中上の言葉は、実に興味深いものだった。
「何が原因かわからないが、スタンダードとカレックスという2つの違うシャーシーを乗り比べても、リアのトラクション不足という根本の原因はなにも変わらなかった。マルクもドイツGPでそれを指摘していた。もしかすると、リアのトラクション不足の原因は車体ではないのかも……」