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惨状を生んだのはコストか情熱か? ホンダとヤマハ、MotoGPの日本勢が陥った不振の根深い要因とは
posted2023/06/15 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
MotoGPクラスの日本メーカーには、今年も厳しい戦いが待ち受けると予想していたが、イタリアGPまで6戦を終えて、これほどひどいことになるとは思わなかった。どれくらい悲惨なのか、ということを知るためにも、次の数字を見てもらいたい。
まず5メーカーが参加するコンストラクターズポイントでは、ドゥカティが211点で独走状態。KTM118点、アプリリア92点と続き、ホンダは79点で4位、ヤマハは64点で最下位の5位となっている。これはメーカーごとのチーム数に影響される数字だが、公平にチームポイントでみてもヤマハワークスが6位、ホンダワークスは最下位の11位と不振がより際立つことになる。
ホンダは長い間、マルク・マルケスの天才的なライディングでチャンピオン争いを繰り広げてきたが、マルケスが2020年に怪我をしてからはタイトル争いに加わっていない。2021年に復帰してからも度重なる怪我と治療で復帰と欠場を繰り返し、今年も開幕戦ポルトガルGPで右手親指を骨折して第5戦フランスGPで復帰したばかり。出場した3戦ではいずれもフロントローを獲得し、今年から始まったスプリントレース(通常の半分の距離で戦われる)では開幕戦ポルトガルGPで3位になったが、決勝レースは3戦とも転倒リタイアに終わっている。
チームメートのジョアン・ミルはウインターテストからまったく精彩を欠いており、6戦を終えて総合24位。2020年のMotoGPチャンピオンのミルは、スズキ撤退を受けてホンダワークス入りしたが、苦戦の連続。第6戦イタリアGPではプラクティスの転倒で右手を痛め、連戦となるドイツGPの欠場が発表になったばかり。マルケスとミルの結果を知れば、ホンダワークスがチームポイントで最下位にいるのもうなずけるはずだ。
低迷が続く原因
ホンダの何が悪いのか。車体なのか、エンジンなのか、電子制御なのか、それともすべてなのか。今年はMoto2のコンストラクターであるカレックスに車体の製作を依頼していることからも、車体に問題があるとホンダは考えているのだろう。
この数年、ホンダはリアのトラクション不足を最大の課題とし、さまざまな対策を講じてきた。エンジン位置を変更し、スイングアームの製作をカレックスに依頼。今年は車体製作の依頼にも及んだ。しかし、トラクション不足によるリアタイヤのスピニングが改善されず、加速、最高速でライバルメーカーに遅れをとり、その遅れを取り戻すためにライダーがブレーキングでがんばった結果、フロントから転ぶという悪循環が続いている。