炎の一筆入魂BACK NUMBER
「戦いながら強くならないといけない」カープ新井監督の思惑と交流戦終了時点の「貯金2」をどう評価する?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/19 11:00
交流戦を9勝9敗で乗り切った新井監督。リーグ戦再開後の戦いぶりが注目される
攻撃においても、積極性からのミスを許容することで、選手個々が持つ能力を最大限に引き出している。その結果、チーム盗塁数はすでに昨季を上回っている。
選手が自由にスタートを切れる「グリーンライト」によって、スタートを切る判断力や盗塁技術が磨かれる。だが、経験の浅い選手だと、失敗してはいけない、失敗したくないという気持ちがよぎってスタートを切れない。赤松真人外野守備走塁コーチの進言もあり、選手の背中を押す意味でも、強制的にスタートを切らせる「ディスボール」のサインも織り交ぜている。盗塁数増加が目的ではないだけに、グリーンライトのほか強制力の程度が5種類ある5つのサインを提示しながら選手の判断力を養っている。盗塁意識の高まりは、盗塁数だけでは計れない。
投手陣においては、登板数などを管理しつつも、早めに勝負手を打つ采配が目立つ。6月15日楽天戦では、6点ビハインドの4回1死満塁で代打の切り札松山竜平を投入。チーム初得点となる2点二塁打から反撃ムードを高めて、一時逆転につなげた。
成熟の果てに見えるもの
打つべき手を打ち、出し惜しみをしない。だから、後味の悪い敗戦が少ないように感じられる。ベンチ内の連携の高さによってベンチワークも冴え、今季代打成功率.261はリーグ断トツだ。
3連覇時はレギュラーだけでなく、代打や代走、守備固めまでのスペシャリストが揃っていた。あれから5年、世代交代はうまく進まず、チームは発展途上にある。盗塁数が増えても、次の塁を狙う走塁がチーム全体に浸透しているとは言い切れず、勝ちきらなければいけない展開で落とした試合もある。だからこそ首脳陣はまず、思い切ってプレーできる環境を整えた。そこから学び、成長していくことで、チームとしての成熟度を上げようとしている。
台頭が待たれる若手の躍進や外国人選手の復調も含め、梅雨明けする頃には新井カープの進化した姿を見られるはずだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。