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「戦いながら強くならないといけない」カープ新井監督の思惑と交流戦終了時点の「貯金2」をどう評価する?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/19 11:00
交流戦を9勝9敗で乗り切った新井監督。リーグ戦再開後の戦いぶりが注目される
開幕前からチームづくりのピークをシーズン終盤に設定していた。ここまではマネジメント力と、コミュニケーション力でチームの可能性を最大限に引き出しているように感じる。
昨秋に右肘クリーニング手術した森下暢仁の復帰を焦らせず、大瀬良大地や床田寛樹らも長期離脱するリスクを未然に回避するため、登板間隔を空けながらローテーションを回してきた。開幕からムチを打って戦い、シーズン中盤に息切れした昨季とは違う。3季連続最下位で、新井監督がひとつのポイントと位置づけた交流戦を9勝9敗で乗り切れたのも、マネジメントがあってこそだろう。
昨季まで広島のウイークポイントと言われてきた中継ぎ陣も整備した。顔ぶれは昨季とほぼ変わらない。新顔は現役ドラフトで巨人から獲得した戸根千明くらい。入団以来2年間、ほぼ1人でブルペンを支えてきた栗林良吏が本調子でない状況でありながら、ここ数年確立できなかった勝ちパターンをつくった。また、投手陣における役割が固定されてこなかった島内颯太郎、ニック・ターリーは、首脳陣の信頼によって自信を得た。
信頼が選手に与える強さ
昨季までは、1度の失敗で選手の立場が危ぶまれた。シーズン途中にセットアッパーに定着した矢崎拓也でさえ、救援に失敗した次の登板で無失点に抑えても「首の皮一枚つながったな」と声をかけられるほど、真の信頼はなかったように感じられた。
今年は春季キャンプから「結果だけを見ていない」と言われ続けた。指揮官がメディアにそう語っても、蓋を開ければ結果一つで評価が変わるということは、プロ野球において珍しいことではない。広島の選手たちも、当初は半信半疑だったに違いない。だが、新井監督はオープン戦で失敗してもチャンスを与え続け、そして開幕してから失点しても、投球内容が悪くなければチャンスを与え続けた。
首脳陣からの信頼が選手の不安や迷いを消し、彼らのベストピッチを引き出した。