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JリーグPRESSBACK NUMBER
JFAのS級コーチ講習会に密着…サッカー界の未来を担う指導者たちは何を学んでいるのか?「議論が白熱して指導実践が長引くことも日常的」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJFA
posted2023/05/25 11:03
S級コーチ養成講習会で選手役の大学生たちを相手に指導実践を行う中村憲剛さん。受講生のひとりとして、日々多くの学びを得ているという
中村憲剛「選手目線での気づきがある」
現役時代にJ1、J2で300試合以上に出場して73得点を記録し、2000年にアジアカップの日本代表に選ばれた北嶋秀朗さんは、「たくさんの気づきがあります」と話す。引退後はロアッソ熊本、アルビレックス新潟、大宮アルディージャでトップチームのコーチを務め、23年度からJFLのクリアソン新宿のヘッドコーチに就任した。
「クラブで仕事をしていると、基本的には(各スタッフの)視点が揃っているなかでの会話が増えていきます。でもここには、ホントに色々な視点を持っている人がいる。その視点は自分にはなかった……というものがあって、すごく面白いんです。『それはどうなんだろう』と最初は思っても、夜になってもう一度考えてみると『やっぱりありかな』と思うこともあったりするんです」
川崎フロンターレで18シーズン稼働し、日本代表としてW杯やコンフェデ杯に出場した実績を持つ中村憲剛さんも、講習会で多くの気づきを得ている。「B級やA級でもそうでしたが」と前置きをして、明るい表情で話す。
「参加者の数だけ考え方がある。同じ現象でも見方が全然違って、それを『違う』じゃなく『それもあるよね』と受け入れるマインドになっているので、みんなが言い合える。みんなに言ってもらえることで、引き出しが増えていきます」
レビューが白熱して指導実践が大幅に長引く、ということも珍しくない。むしろそれが日常的である。参加者が指導実践のピッチや座学の教室にいる時間は、あらかじめ決められたスケジュールよりもはるかに長い。
指導実践は大学生が選手役を務めているが、講習会の参加者も交じって実際にプレーする。「そこでまた、気づきがあるんです」と、中村さんは言う。
「実際に指導を受けるので、選手として思うことが山ほどあるんです。外からでも思うことは多々ありますが、選手役になったほうがその量は多いですね。練習の設定とかオーガナイズ、ルールなどについて、『これだとちょっと難しかったな』とか、『こういうふうに言うと守備が緩くならないんだ』といったような気づきがあります」
<後編へ続く>