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「ヒールを演じているんですよ」鹿島FW鈴木優磨に“黒のカリスマ”蝶野正洋が明かした「ワルの本音」“代名詞ケンカキック”も伝授? 

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池田博一

池田博一Hirokazu Ikeda

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photograph byKASHIMA ANTLERS

posted2023/05/09 11:02

「ヒールを演じているんですよ」鹿島FW鈴木優磨に“黒のカリスマ”蝶野正洋が明かした「ワルの本音」“代名詞ケンカキック”も伝授?<Number Web> photograph by KASHIMA ANTLERS

鹿島アントラーズのクラブハウスを訪れた蝶野正洋(右)と対談したFW鈴木優磨。プロレス好きを公言するだけあって、汗だくになるほど緊張した様子だった

 1984年10月、蝶野正洋は武藤敬司選手を相手にプロデビューを飾る。アントニオ猪木の付き人を務めながら日々の練習を積み重ね、1987年の新日本プロレス所属の若手選手を中心とした大会である「第3回ヤングライオン杯」で優勝。優勝の特典である、海外武者修行へ出た。するとアメリカでは、正義のベビーフェイスとヒールの構図が明確にあった。その経験が、蝶野自ら立ち位置を定めるきっかけとなる。

――“カッコいいヒール”として悪役のイメージを大きく変えた蝶野さんにとって、ヒールとはどのような存在でしょうか?

蝶野 ヒールといえば、やはりサッカーだったら敵地に乗り込んだときにもうナチュラルに何の関係もなく、ブーイングの対象じゃないですか。俺も海外に行ったとき、アメリカなんかでは特にアメリカ人との試合になったらもうブーイングしか来ないんですよ。だから自分が日本で本当にヒールかと言われたら、俺はそうではないと思っているんです。ヒールは簡単になれちゃうんですよ。「ああ、どうも」とメジャーリーガーの大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)みたいに、愛想良く振る舞えば違うし、逆にそこでガっと唾を吐いたら客は「なんだ、あの日本人は」となるわけですよ。同じようにサッカーの世界ではホームとアウェイがあるわけだから、やり方としてアウェイで悪態をつくとかはやっぱりありなんじゃないかと思うよね。

鈴木 そうですね。でも、アウェイで悪態をつくと、その相手サポーターじゃなくて、さらに周りの鹿島サポーターも「アイツなんだよ」となって、全員を敵に回すんですよ(苦笑)。

蝶野 (笑)。

鈴木 結構、それはそれでまたしんどいです。

蝶野 俺にスタッフが送ってくれた映像で、拡声器を使って話しているのがあったけど、あれは地元でのことだったの?

鈴木 はい、ホームです(※4/15ホーム神戸戦でリーグ戦4連敗を喫し、叱咤激励が飛び交うなか、主将の鈴木が拡声器を持ちゴール裏のサポーターと意見交換した)。

蝶野 ホームで何? 客が「お前ら、何をやってるんだ」と文句になって? あれは毎回、スタンドのお客さんたちに対してやってあげていることなの?

鈴木 いや、そんなことはないです。あれはもう、何年かに1回のことでした。

蝶野 ただ、いろいろ言ってくれるということは、やっぱりサッカーに対する熱があるっていうことだよね。俺らの頃も、今はお客さんが大人しくなっちゃったけれど、昔は後楽園ホールなんて野次ばっかり言うやつがいるわけ。一生懸命やっているんだけれど、固め技か何かのときに「おい蝶野! 休んでんじゃねえぞ!」って。

鈴木 (笑)。

蝶野 応援している人たちが9割9分で、そのうち1人か2人、ポイントで上手にヤジるやつがいるわけよ。俺らは前座だけど、前座が終わってセコンドについて、中堅どころの選手の試合で同じことを言われたら、ガーって行って俺らみんなで即行つまみ出して。

鈴木 えー!?

蝶野 もう、今はたぶんダメだよ(笑)。

鈴木 いいなあ、本当いいですね。

「ケンカキック」誕生秘話

蝶野 その意味では、サッカーだと発散が難しいスポーツだよね。何か違うスポーツに変えたほうが良かったんじゃない?

鈴木 まだまだ、やりますよ。でも、サッカーは今はVARといって映像確認もあるし大変ですよ。

蝶野 確かにサッカーはガチガチだもんね。

鈴木 プロレスでは負けたりイライラしたら、次の試合に多少強く当たるとかあるんですか?

蝶野 いや、俺らはどちらかといえば、相手と戦っているんじゃないんだよ。俺らが戦うのは客なんだよね。

鈴木 ああ、なるほど。確かにそうですね。

蝶野 だから今、客が求めていることに対して、今日はガチガチの試合になるだろうと思っていたら、やっぱり相手もガチガチに来るわけじゃない。橋本真也選手は特にそういうタイプだった。

鈴木 あー、確かにすごい(笑)。

蝶野 それで一回、東京ドームでWWEとかいろいろなところと試合になったときがあったのね。うちらは橋本選手とマサ斎藤さん、それで俺と長州(力)さんだったのかな。お互いに何か言うわけではないけど、今日は全日本もWWEもいるからもうガチガチで行くぞとなった。そしたら橋本選手がね、普通の人が蹴るような蹴りじゃないだろうというのを、もうバッカンバッカン蹴ってきた。それでもう、こっちも受けて見せなきゃいけないので、さすがに「コイツふざけんなよ」とガーッて蹴ったら、ケンカキックと呼ばれるようになって。

鈴木 それが蝶野さんの代名詞となった「ケンカキック」誕生の瞬間ですか?

蝶野 そうそう。だからやっぱり客なんだよね。やっぱり全日本に負けたくない、アメリカの選手に負けたくない、迫力のある試合をやりたいというのは、やっぱりどれも客に対してのものなんだ。極論、勝ち負けじゃないよね。なんか、そこで全部を出し切っていたら、別に勝っても負けても、そこは関係ない。

鈴木 プロフェッショナルですね。

【次ページ】 蝶野が語る“わがまま”の必要性

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