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“ミスター・レッズ”福田正博はなぜ古巣・浦和に厳しいのか…“サッカーの街”のクラブが果たすべき使命とは?「愛とはちょっと違うんだ」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2023/04/24 11:03

“ミスター・レッズ”福田正博はなぜ古巣・浦和に厳しいのか…“サッカーの街”のクラブが果たすべき使命とは?「愛とはちょっと違うんだ」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

現在は解説者として活動する傍ら、スクール事業にも注力する福田正博。一歩離れた位置から古巣レッズを見守っている

「まあ、たしかにレッズに対して、ついつい厳しくなる自分がいるのは事実だな(苦笑)。ただ、愛というのとはちょっと違うんだ。もちろん、気になるクラブであるのは間違いなくて……期待かな。レッズにはJリーグを引っ張っていくクラブになってもらいたいし、そうならないといけないクラブだと俺は思っている。だから、厳しいことを言ってしまう。これで本当にいいんですか、問題意識を共有してますかって」

 福田の抱くレッズへの期待は、クラブの経営規模と街のポテンシャルからくるものだ。それゆえ、福田は「愛とはちょっと違う」と感じているのだ。

 クラブの人間が努力していないとは言わないけれど……と、前置きしたうえで福田が熱弁する。
 
「もともと浦和ってサッカーの街だよね。ホンダがプロ化しないということで、三菱が浦和に行ったわけだよね。しかも1年目、2年目、あれだけ弱かったのに日本一のサポーターが支えてくれた。J2に落ちたときも見放すことなく支えてくれた。今だってサポーターの数が最も多いのがレッズだよね。それなのに、今のままでいいんですか、って思うんだよ。ちゃんと責任果たしていますかって。好きだからとか、OBだからとか、カッコつけるつもりはないよ。ただ、もっとできることがあるはずだと期待しているからこそ言っているんだ」

 福田が大事にしているのは、「文脈」である。

 クラブには何十年という過去がある。そうした歴史の上に今があり、未来がある。

「文脈を知ったうえで語らないと見誤ってしまう気がするんだよね。俺自身はレジェンドなんて言われるのは嫌だし、俺をリスペクトしろなんてまったく思わない。ただ、クラブの歴史は知っている。サッカーの街にやって来て、あれだけのサポートをしてもらって、立派なスタジアムもある以上、レッズには使命を果たしてほしいんだ」

Jリーグはどういう意義で誕生したのか?

 文脈を知っていれば、なぜ今、そうなっているのかが理解できる。だからこそ、この先どうあるべきか、どうしていかないといけないのかが見えてくる。

「Jリーグも同じだよね。どういう意義でプロサッカーリーグが誕生し、どんな困難を乗り越えて今を迎えているのか。過去を知らないと、変なところで切り取ってしまって、間違ったものになってしまいかねないよね。歴史ってそういうものなんじゃないかな。ヨーロッパの場合、それが脈々とある気がするけれど、日本の場合はバサバサ切ってしまって、繋がりがないように感じることがある」

 福田に言わせれば、「もったいない」のひと言に尽きる。

「変えるべきことと、変えちゃいけないことがあって、その判断は歴史を知らないとできない。大切にして、継承していくものこそ、“フィロソフィー”なんじゃないかな。日本の場合、リーグもクラブも人が変わると、それまでがなかったことになって、新しく作り上げようとする。その繰り返しが多い気がするんだ」

 そうやって少し引いた場所から日本サッカーを見ている福田だが、現役を引退するときには指導者を志していた。その道はというと……「向いてないかもな」と本人も苦笑せざるを得ない。

【次ページ】 指導者として多くを学んだフィンケ政権

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