「カズに憧れていた」福田正博が今だから明かす30年前の本音…“賞金50万”で買った思い出のヴィトンのバッグ〈Jリーグ前夜の記憶〉

　“ミスター・レッズ”“大将”などの愛称で親しまれ、数えきれないほど豪快なゴールを決めてきた。解説者に転身してからは、歯に衣着せぬコメントでサッカー界を盛り上げている。

　そんな福田正博だが、実際は大胆な印象とは真逆のパーソナリティなのだという。

「よく誤解されるんだけど、俺はどっちかというと、堅実で、繊細な性格なんだよ。例えば、就職先を決めるときだってさ……」

憧れのラモスがいた読売クラブ

　もともと福田は少年時代、読売クラブのファンだった。小学校の担任の義兄が読売クラブの指導者だった関係から、読売クラブの試合を観戦し、練習を見に行ったこともある。

「遊び心のあるプレーっていうか、自由な発想で、サッカーってこういうもんだぜ、って体現していて。まだ日本にプロサッカーリーグのない時代に、アンチテーゼ的な存在で、不良っぽさもあって、かっこいいなって思っていたな」

　練習見学では、与那城ジョージやラモス瑠偉とミニゲームをしてもらったこともある。中学進学に際して読売クラブのジュニアユースに誘われながら、当時住んでいた藤沢から通うのが大変だという理由で断念したものの、福田にとって読売クラブは憧れのチームだった。

「90年5月に日本選抜というのに選ばれて、豊田のスポーツセンターで合宿があったんだけど、帰化されたばかりのラモスさんも選出されて。4人部屋で一緒の部屋になったんだ。感慨深いものがあったし、かなり緊張したのを覚えている。今もお会いすると緊張するんだけどね（笑）」

憧れのラモスらが在籍した読売クラブ　©︎Shinichi Yamada/AFLO

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　そこまで読売のサッカーに憧れ、ラモスを敬愛していたにもかかわらず、中央大を卒業するときに、読売クラブに入りたいという気持ちは一切なかった。

　それはいったい、なぜか――。

「当時はまだプロサッカーリーグがなくてアマチュアの時代。企業に就職して午前中に仕事をして、午後はサッカーをして、現役を引退したら会社に残って定年まで働くのがひとつのスタイルだった。読売クラブや日産（自動車）、ヤマハ（発動機）はプロ志向の強いチームで、ひとつ下の井原（正巳）やゴン（中山雅史）は日産、ヤマハに進むわけだけど、俺にその選択肢はなかったな。慎重なところがあるし、堅実なところもあるし、何より自分にそこまでの自信がなかったから」

　福田が絞り込んだ就職先は、古河電工、三菱重工、日立製作所――。

　日本サッカー協会（JFA）や日本サッカーリーグ（JSL）に強い影響力を持ち、“丸の内御三家”と呼ばれた保守的な3企業だった。

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