甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭も飲み込んだ「シン魔曲」アゲアゲホイホイと準V報徳学園が象徴する「ポストコロナ球児・2つの初体験」声出し応援と…
text by
間淳Jun Aida
photograph byNanae Suzuki
posted2023/04/03 17:03
センバツ準優勝に終わったものの、大阪桐蔭を撃破するなど報徳学園は流石の伝統校ぶりだった
出場校の中には、「延長戦を想定して練習していない」、「タイブレークは運が左右する部分が大きい」と話す監督もいた。一方、上位に進出したチームの多くはタイブレークの練習をしていた。
今大会、東邦と仙台育英をタイブレークで制した報徳学園は練習試合でシミュレーションした。裏の攻撃を想定して、点差が開いていたらヒットを狙い、同点または1点を追う場面ではバントでチャンスを広げる練習を重ねた。主軸でもバント練習を繰り返した。大角監督は「練習試合の相手にわがままを言って、タイブレークの練習もやらせてもらいました。表が守備の時は1失点ならOKという考え方です。東邦戦の無失点は出来過ぎでした」と話す。
仙台育英は「アグレッシブに2点以上」を狙った
報徳学園には敗れたものの、初戦の慶応戦で延長10回サヨナラ勝利を収めた仙台育英の須江航監督は対策を細かく講じていた。「打力のあるチームではないので、最後の3日間は徹底的にタイブレークの練習をしました」。表と裏、それぞれの攻撃でパターンを分けて練習。表の攻撃であれば「アグレッシブに2点以上を取りにいく」作戦だったという。そして、タイブレークの特殊性を口にした。
「タイブレークに入ると試合が一度リセットされ、チーム力の差が小さくなると感じています」
準決勝で敗退した大阪桐蔭はタイブレークにもつれた試合はなかったが、対策は練っていた。特に内野守備に重点を置き、相手打者に守備でプレッシャーをかけてバントをあきらめさせ、ヒッティングのサインに変えさせる守備を強化していた。
3年半ぶりに聖地へ帰ってきた声出し応援は“10人目の選手”になる力がある。タイブレークの勝敗は運だけでは片付けられない面がある。声援もルールも天候も、あらゆる要素を含んでいるのが甲子園。想定外の準備や対応力が不足すれば、魔物に呑まれるのだ。
(つづく)
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