甲子園の風BACK NUMBER
「これが甲子園なのかな」選手・監督でセンバツVの比嘉公也41歳も驚き…チーム打率No.1の沖縄尚学を襲った「信じられないこと」とは
posted2023/04/03 11:03
text by
間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
センバツを良く知っているはずの人物から思わぬ言葉が漏れた。試合終了から約20分後。取材場所に現れた沖縄尚学の比嘉公也監督(41)は、まだ事態を整理できていない様子だった。
「これが甲子園なのかな」
本来であれば、勝利している試合展開だった。再三チャンスをつくり、初回と4回以外は毎回ランナーを出した。ただ、ホームが遠い。今大会の出場校36校の中でチーム打率が唯一4割を超え、1試合平均7.7点でセンバツ切符をつかんだ沖縄尚学は東海大菅生から1点も奪えなかった。
練習でも繰り返していたはずの挟殺プレーで
「信じられないことが起きました。当然、練習でも繰り返していました」
比嘉監督が、こう振り返ったプレーは1点を追う6回の攻撃だった。1アウトから3番・玉那覇世生選手がヒットを放ち、続く仲田侑仁選手のツーベースで二、三塁のチャンスをつくった。
打席に5番・大城龍紀選手が立つ。その初球。サイン通りにスクイズを試みるが、真ん中低めに落ちる変化球を空振り。スタートを切っていた三塁ランナー玉那覇選手が三塁とホームの間に挟まれる。その間に、二塁ランナーの仲田選手は三塁ベースに到達した。
挟殺プレーで東海大菅生の野手に三塁ベースの方へ追い込まれた玉那覇選手も、三塁ベースを踏む。2人のランナーが同じベース上にいることはできないため、前位のランナーに優先権がある。この場合は玉那覇選手が三塁に残り、ボールをタッチされた仲田選手はアウトになる。
2アウト三塁で試合再開となるはずだった。ところが、自分がアウトになったと勘違いした玉那覇選手が三塁ベースを離れてタッチアウト。一瞬にしてチャンスを逸した。比嘉監督は言う。
「試合で起こり得るプレーなので、普段から練習しています。選手もルールを理解していますし、こんなことが起きたのは初めてです」
聖地は想定外が起きる未知な部分の多い場所だった
実は、この試合では信じられないことが続いていた。沖縄尚学にとっては追い風が吹いていた。3回の攻撃では1番・知花慎之助選手が打ち上げた打球を東海大菅生のセカンドが落球。7回2アウトからも、7番・佐野春斗選手のセンターフライを相手がエラーした。8回も途中出場した東恩納蒼投手のゴロをセカンドがトンネルし、ノーアウトからランナーを出した。