甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭も飲み込んだ「シン魔曲」アゲアゲホイホイと準V報徳学園が象徴する「ポストコロナ球児・2つの初体験」声出し応援と…
text by
間淳Jun Aida
photograph byNanae Suzuki
posted2023/04/03 17:03
センバツ準優勝に終わったものの、大阪桐蔭を撃破するなど報徳学園は流石の伝統校ぶりだった
報徳学園は8回に連続ヒットでノーアウト一、二塁のチャンスをつくる。この試合、2度目のアゲアゲホイホイが始まった。だが、残り2イニングで5点リードと心のゆとりがあり、“魔曲”を一度経験した山梨学院の林投手のリズムを崩せなかった。攻撃は内野ゴロによる1点のみに終わった。
スタンドの声援が大きくなって、冷静な判断が
報徳学園は今大会を象徴するチームだった。今回のセンバツでは、球児の初体験が2つあった。声出し応援の解禁と延長10回からのタイブレーク導入だ。
報徳学園は声出し応援を最も力にしたチームといえる。アゲアゲホイホイは準決勝で大阪桐蔭に重圧をかけ、5点差を逆転した。西谷浩一監督は「報徳学園が特徴のある応援をすることは分かっていましたし、相手アルプスの応援に選手が影響されたとは感じませんでした」と話したが、選手たちは「想像以上でした」と漏らす。7回に4連打を許して降板した先発の南恒誠投手は言う。
「報徳学園の応援を自分への声援だと思って投げようと心掛けましたが、アルプス以外にいるスタンドのお客さんも報徳の応援に合わせていて、プラスに変えることができませんでした。報徳の応援の力を想定はしていましたが、高校に入ってから声出し応援を経験したのが初めてということもあって、自分のペースを保てませんでした。力不足です」
長期化する新型コロナウイルス感染拡大により、甲子園の声出し応援は3年半ぶりに解禁された。今の高校球児にとっては、スタンドからの声を聞くのは初めての経験だった。その中で、対応に苦労した選手は少なくなかった。選手からは、こんな声が漏れる。
「相手スタンドの声援が大きくなって、冷静な判断ができなくなってしまいました」
「球場の声で味方の声が聞こえにくく、フライを捕るのが難しかったです」
守備で平凡なフライを落球したり、選手間の声かけが機能しなかったりする場面が目立った。WBC期間で日本の勝利をスマートフォンで確認した観客たちが急に盛り上がる場面もあり、選手たちは相手選手以外の敵とも戦った。
温度差があった延長10回からのタイブレーク
もう1つの初体験、延長10回からのタイブレークはチームによって温度差があった。これまでの延長13回から大幅に変更され、今大会は延長に入ると即、タイブレークに入る形となった。今回のセンバツでは35試合のうち、3試合がタイブレークで決着。昨年のセンバツは計30試合(不戦勝除く)で7試合が延長戦に入っている。この割合が高いとみるか、低いとみるかで、各チームの対策は変わってくる。