甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭も飲み込んだ「シン魔曲」アゲアゲホイホイと準V報徳学園が象徴する「ポストコロナ球児・2つの初体験」声出し応援と…
posted2023/04/03 17:03
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Nanae Suzuki
強力な援軍がいなければ、決勝に進むことも、「逆転の報徳」と呼ばれることもなかった。山梨学院の校歌が終わると、報徳学園の選手たちは三塁側アルプスの前で一列に並び、深々と頭を下げた。感謝と謝罪を込めた一礼だった。試合後、攻守の要・堀柊那捕手が真っ先にチームの気持ちを代弁した。
「応援してくれた仲間に申し訳なかったです」
“魔曲”になりつつあるアゲアゲホイホイに乗って…
2002年以来となるセンバツ優勝は、あと一歩届かなかった。だが、決勝でも甲子園を沸かせた。4回。3番・堀選手と4番・石野蓮授選手の連続ヒットでノーアウト一、二塁と先制のチャンスをつくると、三塁側アルプスから、あの曲が流れてくる。
智辯和歌山の応援歌「ジョックロック」に続く、“魔曲”とも呼ばれ始めた「アゲアゲホイホイ」。「サンバ・デ・ジャネイロ」の軽快なリズムに合わせて、報徳のチームカラー緑色のメガホンが上下に揺れる。1800人の応援団が選手を後押しし、山梨学院を呑み込む。「もっと、もっと」の掛け声で、三塁側内野スタンドやレフトスタンドの観客も巻き込んでいく。報徳学園の大角健二監督が「うちには応援の力がある」と頼りにする援軍だ。
5番・辻田剛暉選手が送りバントを決め、打席には6番・西村大和選手。その初球。“魔曲”の力なのか、冷静で緻密なコントロールを武器とする山梨学院のエース林謙吾投手が左足を上げるとバランスを崩す。予想外のボークで報徳学園が先制した。さらに、西村選手がタイムリーヒットを放ってリードを広げた。
「甲子園は1つのプレー、1つのミスでスタンドが沸き、流れが変わると感じていました。チャンスで1本打ちたいという気持ちで打席に入り、アルプスの盛り上がりが良い声援になりました」
“魔曲”を一度経験した山梨学院のエースは…
しかし、5回だった。ここまで1安打、無失点に抑えていた報徳学園の間木歩投手が、1アウト一塁から初の長打となる二塁打を許す。1アウト二、三塁とされ、一塁側アルプスの声援が一気に大きくなる。
チームカラー水色のメガホンを上下に揺らして声援を送る山梨学院の応援に、報徳学園の選手たちがペースを乱す。間木投手が9番・伊藤光輝選手に2点タイムリーを許して同点とされる。さらに、3連打を浴びて降板。マウンドを引き継いだ今朝丸裕喜投手も山梨学院の勢いを止められず、報徳学園は1イニングで7点を失った。