甲子園の風BACK NUMBER
「大阪桐蔭が“可愛くてごめん”!?」「チュンチュンとは何ぞや…」センバツ“全出場校を現地取材”ブラバン研究家が衝撃「令和の応援は違った」
posted2023/03/30 11:01
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
第95回記念選抜高校野球大会が佳境を迎えている。ここ数年、コロナ禍で行われた春夏の甲子園は、感染対策で吹奏楽部の応援が禁止になり、録音音源を流す対応がとられた年もあった。
昨夏までは、声を出しての応援自体も許されず、ひたすらメガホンをたたいての応援が繰り広げられていたが、今大会からは4年ぶりに声出しも解禁に。ブラバン応援を観戦するのが趣味で、取材を続けている吹奏楽部出身の筆者も、「いつもの甲子園」を堪能しに、連日アルプススタンドに通った。
応援ファンとしては心踊る、久々の通常運転。そこで見た令和のリアル応援は、いつもとは少し趣が違った。もっとも、毎回出場校が変わるので、応援曲や内容が異なるのは当たり前なのだが、今回目立ったキーワードは、ずばり「令和のヒット曲」と「郷土色」。あらためて、印象に残った応援を振り返ってみたい。
変化1)昭和歌謡からの脱却か
『サウスポー』や『狙いうち』、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』『ルパン三世』『海のトリトン』のテーマ曲など、多くの学校が応援曲として使用する懐かしの昭和歌謡やアニメ曲。長年ブラバン応援の取材を続ける筆者のもとにも、よく「なぜ、高校生が生まれる前の知らない曲が、いまだに応援に使われているのか」という質問が寄せられるが、彼らにとって、「昔の曲」ということはまったく関係ない。これには理由があり、「吹奏楽部に昔から受け継がれている応援曲リストのなかから好きな曲を選ぶ」というシステムが多いということと、「憧れの先輩がヒットを打った曲で、自分も打席に立ちたい」というケースがほとんどだ。
昔の曲を使い続けるのは、楽譜の用意や練習など、「毎回、応援のために新しい曲を準備する余裕がない」という吹奏楽部の事情もあるのだが、特に夏の甲子園は、吹奏楽コンクールと予定が重なるため、自分たちの練習が忙しいということと、県大会から甲子園まで1週間程度しかないため、野球応援練習にあてる時間の余裕がない。