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「大阪桐蔭が“可愛くてごめん”!?」「チュンチュンとは何ぞや…」センバツ“全出場校を現地取材”ブラバン研究家が衝撃「令和の応援は違った」 

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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posted2023/03/30 11:01

「大阪桐蔭が“可愛くてごめん”!?」「チュンチュンとは何ぞや…」センバツ“全出場校を現地取材”ブラバン研究家が衝撃「令和の応援は違った」<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

令和の甲子園「リアル応援」はいつもとは少し趣が違った。印象に残った応援を振り返ってみたい

「よさこい」に「忍者ハットリくん」〈高知・永見〉

 同じく中国・四国地方代表の高知(高知)は、高知県民の魂ともいえる『よさこい鳴子踊り』を披露。応援団やダンス部の生徒が「高知」「必勝」と書かれた鳴子を手に、「高知の城下へ来てみいや」と元気に歌いながら、躍動感あふれる踊りを披露した。

 30年ぶりの出場となった氷見(富山)は、ヒットが出た際にアニメ『忍者ハットリくん』の主題歌のワンフレーズを演奏。吹奏楽部顧問の坂林良樹氏に聞いたところ、「作者の藤子不二雄Aさんが氷見出身で、市内のあちこちにハットリくんモチーフのモニュメントなどがある」といい、「地元の誰もが知っている曲を」と、同曲をアレンジして使用することを思いついたという。

“憧れるのをやめよう”

 センバツ期間中、日本の優勝で大いに盛り上がったWBCでは、アメリカ戦前の大谷翔平のスピーチに注目が集まった。アメリカ戦を前に「憧れるのをやめましょう」「憧れてしまったら、超えられない」といった主旨のスピーチで、アルプススタンドで応援取材を続けている筆者は、「そのまま高校野球にも当てはまるのではないだろうか」と感じた。

 というのも、近年の応援では、大阪桐蔭のオリジナル曲『You are スラッガー』を取り入れる学校が非常に多く、リクエストした野球部員にこの曲を選んだ理由を取材すると、「大阪桐蔭に憧れているから」「大阪桐蔭みたく強くなりたいから」という理由が大半だからだ。大半というか、こういった声がすべてといってもいい。

 吹奏楽部の立場としても、熱血ブラバン少女だった筆者が、高校時代にもしも大阪桐蔭吹奏楽部に所属していたら、連日テレビ中継から『You are スラッガー』が聴こえてくるたび、「うちの曲なのに……」と思うだろうし、甲子園の相手スタンドからこの曲が流れてきたら「えーっ……!?」と、部員同士で顔を見合わせるはずだ。

 大阪桐蔭をリスペクトし、尊敬のまなざしを向けるのはわかる。しかし、大谷の言葉を借りるならば、「憧れてしまったら超えられない」のではないだろうか。

 対等な立場で勝ちにいくために、これからもさらなる独自性のある応援曲に期待したい。そう思わされたセンバツだった。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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