甲子園の風BACK NUMBER
21世紀枠漏れで“初の甲子園”逃した兵庫の進学校「マナーのいい学校を選んだ…じゃあウチはそうじゃないの?」落選した高校の本音
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2023/03/20 17:00
21世紀枠の候補校に挙がりながらも、出場を逃した小野高校。文武両道、昨秋は県8強など好成績を評価されていた
兵庫県中部に位置する小野市にある進学校で、地域との結びつきも強い。近隣の小学生を集めて行う野球教室は今や野球部の行事のひとつであり、それを契機に猛勉強を重ねて野球部に入部する生徒も多いという。監督室にある白い千羽鶴も地域の思いが詰まっているものだ。
「学校の近所に住んでいる90歳のおばあちゃんが“甲子園が決まったら持っていって”と1人で折ってくださって……。もともと地元では色んな応援をしていただいていましたが、昨年の12月に近畿の21世紀枠候補校に選ばれてからは、こういった声は一層多くいただいていました。とてもありがたいことです」(北垣監督)
北垣監督が「勝利」にこだわる理由
21世紀枠の近畿地区候補に挙がった直後、北垣監督は選手らにこう語りかけた。
「勝つチームを目指そう」
文武両道・限られた環境下での奮闘・地域に根付いた野球部――21世紀枠で選ばれる学校はそういった要素が大きく評価される。だが、だからこそ北垣監督は“勝利”にこだわってきた。
「甲子園は全国大会。出場する以上は、マナーがいい、キビキビしている動きも大事ですが、全国で勝てる力とか、そこにふさわしい学校が出場するのだと思っています。ウチは進学校でも兵庫県で勝てる力がある、と評価してもらえるものだと思っていました。でも実際はそうじゃなかった。偉そうなことを言っているかもしれないですけれど、本気で甲子園を目指して、ここまでやってきたつもりです」
昨年の覇者・仙台育英の豊富な投手陣にどう対処すればいいのか。名門・大阪桐蔭は大舞台でどんな戦い方をしているのか。21世紀枠の候補になってから、選出されたことを想定して強豪校の探究を続けてきた。何より、主将の市橋慶祐(3年)を筆頭に、近隣から集まった“本気で野球が好きな子”たちが毎日、朝練習から野球に打ち込んできた。
「練習に取り組む態度も真面目だし、素直な子ばかり。純粋に野球が好きで、小野に来てくれた子ばかりなんです」
センバツ選考の日から数週間が経った2月中旬。北垣監督は「2、3日間かなりへこみました」と苦笑いを浮かべながら取材に応じてくれた。
「負け惜しみではないですよ。ただね……」
こう前置きをした上で、胸の内を明かす。