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なぜ強豪クラブの中学生は健大高崎を選ぶ? “良い環境”だけじゃない高校野球の最新リクルート事情…訴えるのは“誰のもとで野球をやるか”

posted2023/03/23 17:00

 
なぜ強豪クラブの中学生は健大高崎を選ぶ? “良い環境”だけじゃない高校野球の最新リクルート事情…訴えるのは“誰のもとで野球をやるか”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

センバツ開会式で、入場行進する健大高崎ナイン

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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 2年ぶり6回目のセンバツ甲子園出場を決めた高崎健康福祉大高崎高校(以下、健大高崎)。大会初戦はプロ注目の捕手・堀柊那(3年)を擁する近畿大会準優勝・報徳学園との一戦とあって、“屈指の好カード”と注目を集めている。

 健大高崎といえば『機動破壊』を旗印に機動力を活かしたスタイルで全国区の仲間入りを果たした。だが、現在は「壮大な野球で高校野球ファンを魅了する」という意味を込めた『スペクタクルベースボール』という新基軸を掲げている。指揮官・青柳博文監督が「昔は小柄で脚の速い子が多くいて、投手は継投で凌いでいました。でも今は振れる力のあるスラッガーも来るようになったし、球の速い投手もいる」と自負するダイナミックな野球で昨秋に関東大会4強入りを成し遂げ、センバツ出場を勝ち取っている。

 その『スペクタクルベースボール』を下支えするのが中学生のリクルートだ。

 チームを率いて20年以上の青柳監督が「特別な実績があるわけではない」と言うように、歴史ある強豪校と比べて突出した結果はまだない。2011年夏に甲子園初出場、そこから春6回・夏3回と経験を積み上げるが、最高成績は12年春の4強。桐生第一、前橋育英に続く群馬県勢3校目となる全国制覇を目指す途中だ。NPBには現在6人のOBが在籍しているが「ドラフト1位」は未だ現れていない。

 だが、近年の中学硬式野球を取材していると、各強豪クラブの主力選手がこぞって健大高崎に進学しており、関東では「人材が集まっているチーム」の5本の指に入ると言っていい。さらに今春には昨年の侍ジャパンU-15代表のエース格だった東京城南ボーイズの佐藤龍月(りゅうが)が、数多の強豪校との大争奪戦の末に健大高崎に進学を決めている。今大会のベンチ入りメンバーの出身中学を見ても、全国9都府県の実力者たちが名を連ねている。

 なぜ健大高崎に人材が集まっているのか。

「学校の支援と情熱がないと無理」

 まずは、やはり環境面の充実だろう。

「理事長、副理事長ら学校の応援なくしてはここまでの結果はありません。高校野球は学校の支援と情熱がなければ自分がいくら頑張っても無理ですから」

 そう、青柳監督が学校側のサポートに感謝するように、健大高崎には野球部専用寮や専用グラウンドだけでなく、サブグラウンド、室内練習場、トレーニングルームと設備が揃っており、野球に打ち込む環境としてはこの上ない。

 さらに、野球部に関わるスタッフの多さは全国随一だ。監督を含めて11人(うち6人が教員含む学校職員)のスタッフがおり、年間300試合以上の実戦経験を積むことができる3チーム編成を可能にした。特筆すべきはチームを率いて20年以上の青柳監督が、その大勢のスタッフを分業制で束ねている点だ。

【次ページ】 サラリーマン経験を生かしたマネジメント

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